第1916話 フロトーーク!

 今回はですね、娘との風呂トークをお届けしたい。某番組風に書くと『フロトーーク!』でしょうか。どうでも良いですけど。


 前回はほら、『ロボットに口は必要か』みたいなやつを紹介しましたので、今回は、正しい『母と娘のフロトーーク!』をお届けしようかと。『正しい』って何よ、と思われたかもしれませんが、なんかイメージとしてないです? 母娘に限らず、女同士の風呂での会話ってこんな感じだろ? みたいなの。


 それです、それ。

 というわけでゴー。


 私と娘のフロトークのテーマは大抵の場合、娘から提供されます。


 今日の給食が美味しかった、という話から、「今日の夕飯は何?」、「わたしの好きな食べ物なーんだ?」だったり、


 今日図工でこんなことした、という話から、「お母さんは図工得意だった?」になったり。


 ですが、不思議なことに、最終的な締めはほぼ同じなのです。締めの挨拶か? ってくらいに似たような話で締められるのです。それがこちら。


宇部「――だから、お父さんと結婚して良かった、ってワケ」

宇部「――ね、やっぱりお父さんっていい男でしょう?」


 おかしいでしょ。もうだいたいこうなる。

 なんでしょうね、イメージとしてはあれね。川が最終的に海に繋がってるみたいな。そんな感じ。気づけば海にいる。


 さて、そんな書き出しで始まります娘とのフロトークです。


 その日も全身を丸洗い後、湯船にとぷりと浸かった娘ちゃんからトークテーマが提供されました。


娘「お母さんって、北海道にいた時に好きな人いた?」


 はい、今回はこちら!


『お母さんがお父さんと出会う前の恋のお話!』


 テーテーテッテテーテー(朝まで生テレビ!のテーマ)


 今回はこちらのテーマで『風呂から出るまで生トーク』です(のぼせに注意!)。


宇部「よっこらせ(湯船に入る)。いたよ」


 果たして娘の言う『北海道にいた時に』というのがどれくらいの時期のやつを指すのかはわかりませんが、そりゃあいました。お母さんはそれはそれは惚れっぽかったので、失恋する度に新たに好きな子はいました。


娘「何でその人と結婚しなかったの?」

宇部「えっ?」


 どうやら娘の中では、好きな人とはもう結婚出来るものらしいのです。何そのシステム。


 いや、私だけが好きでもね? あと、私の中では娘の言う『好きな人』って中高生とかの時のだと思ってたよ! 確かに大学生〜社会人一年目の時には彼氏もいたけど、その彼、学生時代からちょっとアレな部分が見え隠れしてたけど、社会人になったら『ちょっとアレ』が『社会人としてどうなの』に進化した上、トドメにネズミ講ですからね。


宇部「いやー、ほら、その時は結婚出来る年齢じゃなかったりさぁ」

娘「そうなの?」

宇部「そうそう。だってほら、学生だったしね?」

娘「大人になってからは?」

宇部「大人になってから、も、まぁ……いたけどさ(でもアイツ、最終的にネズミ講だしなぁ」


 たとえ子ども相手でも嘘はつきません。彼氏がいた事実は隠しません。


宇部「でもほら、お母さん秋田に来たしね? あっ、でもちゃんとお別れしてからだよ? 秋田に来たのは」


 何が原因で別れたかについてはもちろん伏せました。伏せましたが、きちんとお別れしてから、ケリをつけてから秋田ココに来たんだよ、とそこはしっかりアピール。お母さんはふしだらな女じゃないんだよ!


 すると。


娘「まだ好きだったりしないの?」


 ぐいぐい来るな、お前!

 お前ここでお母さんが「ぶっちゃけちょっとある」とか言い出したらどうする気? もうはっきり言っちゃうけど、お母さん、マジで未練があったら、正直に言うと思うよ? 全くないから良いけどさ!


宇部「まーったくないよ」

娘「そうなの?」

宇部「そうだよ。それにほら、お母さん、お父さんに出会ったしね?」

娘「あーはいはい」

宇部「あんないい男いたら、他の人なんてもう全然アレだから。目に入らないから」

娘「わかるー」


 わかるのです。

 娘にはお父さんの良さがわかってしまうのです。さすがは寝る前のハグを私と取り合う娘です。お父さん大人気。


宇部「それにほら、もしお父さんと結婚してなかったら、娘ちゃん生まれてないしね?」

娘「あっ、そっか!」


 いま気づくんかい。


宇部「お母さんがお父さんと結婚して良かったでしょう?」

娘「そうだねぇ」

宇部「お母さんもさ、娘ちゃんも息子君もいるし、毎日幸せだから、お父さんと結婚して良かった、ってワケよ」

娘「そっかー!」 


 って、そういう感じで締める、っていうね。


 なのでまぁ、最終的に海に流れてるのは私の意思なんですけど。だってさ、トークテーマがそういうやつなんだもの。

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