第1915話 母の日報告・後編
さて、後編です。
ジェットコースターですっかり消耗した娘ちゃんは、次はメリーゴーランドに乗りたいと言いました。そうね、ちょっと心を落ち着けたいわよね。じゃ、兄さんはどうする? 何か違うの乗る?
さすがにジェットコースターを所望する小6男子がメリーゴーランドはないだろうと思い、聞いてみました。本当に小さい遊園地ですから別行動をしたところではぐれる心配などありません。それに、もちろんその場合は親も二手に分かれるつもりでした。
が。
息子「ぼくもこれ(メリーゴーランド)乗る!」
天使!
天使というか、王子?!
お前がこんなの乗ったらもう王子だから!
危うく昇天しかけましたが、こらえました。
そんでまた白馬選ぶのかよ! このナチュラル王子がよ!
あと一歩でシャウトするところでしたが、こらえました。
ちなみに娘はプリンセスが乗りそうな馬車みたいなやつです。プリンセス、視線こっち! こっちにお願いしまーす!
優雅にぐるぐる回る子ども達とは対照的に、親の方はやや興奮気味でハァハァです。可愛い。我が子が可愛い。
で、最後はどうするか? ということになりました。やはり締めはあれでしょ。
観覧車!
やはりデートの締めは観覧車なのです。てっぺんでチューとかするんだろ? カップルはよぉ。
これももちろん子どもだけで乗れるのですが、ほら、観覧車って乗り降りする時も止まらないじゃないですか。娘がね、それすらもビビっちゃって。乗れなかったらどうしよう、降りられなかったらどうしよう、って。なので、最後は家族全員で乗ることになりまして。
で、私と息子、旦那と娘、という組み合わせで向かい合わせで乗りましてね。すると息子がこんなことを言うわけです。
息子「ダブルデートみたいだね!」
待て待て待て待て。
お前そんな単語どこで覚えて来た?
ていうかこの場合、座ってる組み合わせ的にママと息子、パパと娘でカップルってこと?!
なんてことを考えておりますと、
息子「お父さんとお母さんが、カップルでー」
ホッ。
成る程、そこはちゃんと夫婦でカップルなのね。
でもそうなると君達兄妹でカップルになっちまうが?
息子「ぼくと妹ちゃんがイタチ」
イタチ?!
突然のイタチ!
何で?!
そう考えておりましたら、旦那から補足説明がありました。どうやら『リズム天国』というリズムゲームの話のようで、その中の『ダブルデート』に、人間のカップルとイタチのカップルが出るのだと。言われてみればそんなゲームがあったな。やったことあるのに忘れてたわ。成る程、人間の方はお父さんとお母さんに譲ってくれたと。優しいな。
それでまぁ、無事に遊園地も終わってですよ。
お昼にラーメン食べて帰宅して、それでカレー作りに入るわけです。カレーの部分はノートに書いたので端折りますけど、最後にね、お風呂上がりの娘ちゃんとの会話をお届けしたくて。
それはお着替えも済ませて、娘ちゃんの髪を乾かしていた時のことです。なんやかんやで観覧車の話題になりました。
娘「観覧車って、何が楽しくて乗るのかな」
宇部「それはほら、景色を楽しむとかね? 遠くまで見えて楽しかったでしょ?」
娘「確かに遠くまで見えたけど」
宇部「あとはほら、ああいうのはカップルが二人きりになるためのやつっていうか」
ついついそんなことを口走ってしまいます。すると、急にパァッと表情を明るくさせる娘。やはり女の子は恋バナが好きなのか。
娘「チューとかするのかな」
宇部「するんじゃない?(むしろしないとかあんの?」
私なら絶対にさせます。いや、実際はしないで終わる可能性の方が高いけど、させようとはします。何のための密室よ。
娘「じゃあ、夜にならないとだね」
宇部「何で夜?」
娘「お月様が出てる時にするものでしょ、そういうのは」
宇部「ロマンチックな演出……)いや、あの遊園地はお月様が出る時間まで営業してないんじゃないかな。ていうかさ」
娘「?」
宇部「別に明るい時にチューしても良いのでは?(むしろ学生の身分で夜にチューなんて早いから!」
娘「そうだった! お父さんとお母さんもそうだもんね!」
宇部「ヴッ、ソウデスネ(流れ弾が……!」
娘「おはようのチューして、行ってきますのチューして、お帰りのチューして。それ以外にも何かチュッチュしてー」
宇部「よくご存じで」
娘「あとはー、もしかしてわたし達が寝た後もしてる感じ?」
宇部「……してる感じですねぇ。仲良しなので」
娘、『チュー』って言う度に、手で作ったきつねみたいなやつをチュッてくっつけるの可愛い。
娘「わたし、お父さんとお母さんが仲良しでほんと良かったと思う」
宇部「ウッ、ほ、ほんと?(泣きそう」
娘「ほんとほんと。喧嘩とかしなくて良かった」
もうね、最後の最後にまたとっておきのを食らったなって思いましたね。何この子、そういうのも言えちゃうの? ちょっとジーンとしちゃったわよ。そんでその後にあのカレーですから。最高の母の日になりましたね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます