第1909話 自信をつけたらしい

 さて、前話の続きなんですけども。


 そう、子ども達がゴーカートを運転した、って話ですよ。私と旦那はそれぞれ助手席に座って、ブレーキ役です。


 で、二台ほぼ同時にスタート。ほぼ同時と書きましたが、娘カーの方が気持ち早く出ました。というのも、エンジンをかけてくれる人が一人しかいなかったからです。まず我々のをブルルルンってやってくれて、次に息子カー、というわけでして。


 それでですよ。

 人生初運転となるゴーカートです。娘ちゃんのドライビングテクニックや如何に!


 まぁアクセルベタ踏みってのは前話でも触れましたが、所詮はゴーカート。そんなにスピードなんか出ねぇだろ。


 そう思っていたんですけど、思った以上に出る! 嘘でしょ! 結構加速するんだが!? カーブ曲がれる!? そんで結構な角度のカーブだな、おい!!!


 そりゃブレーキも踏みまくりですよ。おっかねぇ。


 そんな私のアシストもあり、多少の蛇行はありつつも何とかゴールすることが出来たわけです。


 が。


 息子カーがなかなか来ないのです。

 いや、途中からおかしいな? とは思っていました。ちらっと後ろを見た時に、結構早い段階でいなかったのです。


 多少のタイムラグがあるとはいえ、ほんの数十秒なのに。ただ、娘はアクセルベタ踏みでしたから、息子がハイパー安全運転派なのであれば大差がつくかもしれません。


 にしてもさ、ゴーカートだよ?

 コースだって短いしさ?

 

 ですがこのコース、意外と凝ってて。坂道というか、ちょっとした丘みたいになっている上、ぐねんぐねんとカーブしてるものですから、敷地面積の割には長く楽しめるのです。あと、恐竜のオブジェやら木やらが植えられているので、それに遮られていることもあり、全然息子カーが見えません。しかし遅いな。


 えっ、どんな運転してるんだ、息子。


 ハイパー安全運転か?

 むしろ息子(好奇心∞)こそガンガン飛ばして、娘(ビビリ)の方はノロノロ運転だと思ってたんだが!? 逆!? ハンドル握ると性格が変わる的な!?

 

 しばらく待って、息子カーが見えてきました。さぞかしノロノロ運転なのかと思いきや、全然そんなことはありませんでした。そこまでブンブン飛ばしてるわけではないものの、ノロノロ運転でもなく、まぁまぁ普通に安全運転でした。


 で。


宇部「ずいぶんゆっくりだったね。景色を楽しみながら運転してたの?」

旦那「いやー、それがさ」

宇部「?」


旦那「事故って」


 事 故 っ て !


宇部「えっ!? えっ、えぇっ!?」


 事故ってどういうこと!?


 聞けば、事故というか、カーブを曲がりきれずに、コースを仕切っているタイヤに突っ込んだ、というだけではあったんですけど、それでもなかなかの重量があるゴーカートをコースに戻すのは大変だったらしく、それで遅くなったとのこと。


 これ、息子が一人で乗ってたらどうしてたんだろう。

 そう考えると恐ろしいですね。息子一人の力でどうにか出来たかな。


 で、それを聞いた娘はですね、なんかもう得意気でね。もうね、調子に乗っちゃって。


娘「わたし、ほんとの免許取る時もなんか大丈夫かも」


 そんなことを言い出して。運転って案外簡単だね、みたいな。


 いいかい娘、良く聞いて。

 お母さんはね、免許はマジで一発で受かってんの。

 学科はもちろん、実技の方もだよ?


 何なら実技の方なんて、直前まで練習してたコースが当日いきなり工事だったか事故だったかで一車線埋まっててね。このタイミングで車線変更です、って練習してたのにそれが出来なくなってね。それでも咄嗟の機転でうまいことどうにかしてね? それで受かったの。あの一瞬に関しては、マジで私よくやったって思ったもの。


 それでもね。

 それでもいまのお母さんをご覧?

 運転してるかい?

 してないよね?


 何ならこのゴーカートのハンドルだって握りたくないくらい、運転が怖いんだ。君達のためならってことで勇気を出して今回運転席に座ろうと思ったけど(まぁ結局運転しなかったけど)、マジで勘弁してほしいってくらい運転に対して苦手意識がある人間なんだ。


 だからね、えっと、何が言いたいかっていうと、たぶんお母さんはもうマジで運転に向いてない人間だけど、君は大丈夫そうだね。お母さんに似なくて良かったね、って。


 でも、油断はしちゃ駄目だぞ。車はおっかないからね。


 そんでいきなり事故った息子よ。

 もしかしたら君はお母さんに似てしまったかもしれないね。ほんとごめん。

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