第1852話 クイズでよくあるやつ
前々回、前々々回の『私の荷物が姫路に云々』にもちょっと関連する話なんですけど、私ね、説明するのがとにかく下手で。いやいやお前、アマチュアだっつっても、小説を書いて上げてるだろ? エッセイも書いてるだろ? それくらいの能力はあるだろ? って思われたかもしれません。
私だってね、これが書面とかそういうのだったらもう少しやれたと思うんです。とはいえ、『もう少し』レベルですけど。
だってそうでしょう? このエッセイを読んでもわかるでしょ? 私がバシーっと簡潔にまとめたことが一度でもありましたか? 小説にしても、立て板に水でスパパパパッと論破するようなクレバーなキャラなんて存在しません。ただただ眼鏡をクイクイさせて思わせぶりな事を言うだけの当て馬ならいるかもしれませんが。
このエッセイだって、最もクレバーで立て板に水なのは『ビヒダス』の由来を尋ねた時に「『ビフィズス菌』で『出す』からじゃない?」とコンマ数秒で答えてくれた旦那くらいなものです。しかも間違ってたし。
とにもかくにも、このようにネット上で「我こそはアマチュアWEB作家でござい」とでかい顔をしていますが、下手くそなのです。しかも、まだ文章ならマシなわけですから、口頭での説明は酷いものです。
「えーっと、今日荷物が届くことになってるんですけど、あっ、でも私が頼んだわけじゃないんです。でも、ク□ネコさんのアプリの通知でお知らせが来たので、それに関しては嘘じゃないと思うんですけど」
基本的に「えーっと」「何ていうか」「あの」を織り交ぜながら、三歩進んで二歩下がるような説明になります。それでもちゃんと話を聞いてくれた警察の方、ク□ネコさん、カード会社さん、ありがとうございます。
それでですよ。
ある日の職場での話です。
思いっきり自分のことを棚に上げた話になりますけど。
お客様もですね、欲しいものをバシッと言える方って案外少ないんですよ。若い方なんかは画像を検索して、それを見せてくれたりするんですけど、年配の方は基本的に口頭での説明になるわけです。ここのエッセイでもちょいちょいそんな報告はして来たと思います。
ただですね。
その年配の方々、みんながみんな、説明が下手ということはないんですよ。欲しいものを一発で言えないだけというか、そこにたどり着くまでが長いだけだったりするんですよ。ああもう耳が痛い話ですわな。完全に私の話じゃねぇか。
ある日のことです。
作業中の私に、年配の男性のお客様が声をかけてきました。商品を探しているんですが、と。はいはい、お任せください。この資材館のことでしたら、この私にお任せください。使い方はわからずとも、どこに置いてるかとか、そもそもウチで取り扱いがあるかどうかとか、そういうのはパート内で最も詳しいのです。
すると、お客様は言いました。一応、通路番号はフェイクです。ここにフェイクを入れる意味がわからんけど。
お客様「あの、階段の手すりなんですけども」
宇部「はい、手すりのコーナーはですね(手すり関係ならパーツも含めて40番通路だな)」
お客様「じゃなくて、その、手すりをつける時の」
宇部「ネジですか?(ネジなら42番通路か)」
お客様「ええと、ネジじゃなくて。いや、ネジでつけるんだけど」
宇部「はい。(ネジじゃないのか? それとも、階段の手すりって言ってるし、階段の滑り止めの可能性も? あるいは壁紙とか?)」
頭の中では連想ゲーム開始です。いやいや、階段の手すりって言ってんだから、滑り止めや壁紙のはずはないじゃん、って思われたかもしれませんが、これくらい飛距離があるパターンも実は結構あるのです。
お客様は何やら一生懸命思い出そうと、手をパタパタさせています。パタパタして思い出せるなら、いくらでもパタパタしてくれ。そう思っておりますと、「あの、ほら、探すやつ」と呟いたのです。聞き逃しませんでした。わかりました、お客様ァ!
宇部「下地センサーですね?」
下地センサーとは、壁に何か(この場合は手すり)を取り付ける際に、壁の裏に下地があるかどうかを探すものです。まぁ名前のまんまっちゃーまんまなんですけど。この『下地を探す道具』はセンサーで探すタイプと針を刺して探すタイプがあります。とりあえず、どっちも『下地センサー』と呼ぶ方が多いです。
するとお客様は、「それです!」と。
良かった良かった。それでしたら、44番通路にございます。と言ってご案内です。ご案内しつつ、ふと思い出したのは、クイズ番組です。ほら、あの、よくあるじゃないですか。
出題者「日本で一番高い山と言えば」
解答者「ピンポン!)富士山」
出題者「で・す・がぁ~。では、二番目に高い山は!?」
みたいな。
あれだったな、って。
私ったら、完全に早押しのノリで案内するところだったな、って。
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