第1810話 どうしても見せたい

 皆さん、平日午後の通販番組っていったら何を思い浮かべます? まぁ平日に限らなくても良いんですけど。


 ジャパネットたかた?

 それとも夢グループ?

 あとは、会社名はわかりませんけど、なんかとにかく気付けばしれっと青汁の話になってるやつとかね。ありますね。


 最近宇部さんが気になってるのは、これ。


 BSファイン。


 わかります?

 なんか、『着る岩盤浴』とか、そんなキャッチコピーの腹巻……じゃなかったボディウォーマーが大ヒット中らしくてですね。


 それでですよ。

 何が気になるか、って話なんですけど。

 これがですね、だいたいドライブ中に流れてくるわけです。私普段休みの日ってテレビつけないんですよ。ずーっとPCカタカタしてるだけの人だから。画面を二分割して片方で動画とか映画とか流しつつ、ひたすらカクヨムしてる人。だから、平日の日中にテレビ的なものを見るとしたら、旦那の車の中なんですね。


 で、そのBSファインの通販番組が始まってですよ。

 まぁとにかく冷えは良くないですよ、みたいな内容なわけです。そこで登場するのが二人の女性。60代とか70代だったと思うんですけど、とにかく『高齢女性』にカテゴライズされる二人だったと思うのですが、それがまぁ対極的でね。


 片方の温子あつこさん(仮名)は、とってもアクティブで顔色も良く、昼間っからお友達とボウリングに興じるようなパワフルな女性。たぶん秋口とかなんですけど、ボウリングの時は半袖だし、お出かけ時は裸足にサンダルでした。

 そしてもう片方の涼子りょうこさん(仮名)は、インドア派で顔色も悪く、来ている服も暗い色ばかり。こんなのもうほぼほぼプライベートの宇部さんじゃねぇか。何を着ても、重ね着しても寒い寒い、と。


 それで、二人の決定的な違いは何か、っていう。サーモグラフィ的なアレで見てみると、温子さんの方はお腹を中心に体温が高く、涼子さんの方はどこもかしこも冷えまくっている、と。


 これだ。

 っていう話でね。


 温子さんが愛用しているのはこれ、着る岩盤浴・BSファインのボディウォーマー!


 というわけで涼子さんも二週間試してみることに! っていう展開になるわけです。


 なんですけど、この番組、なかなかの長さなんですよ。たぶん30分くらいある。なので、すぐに2週間後のアフターに移らないのです。そのBSファインを作っているナントカ繊維とかいう会社を訪問してみたり、そのBSファインに使われている繊維の説明だったりが入るわけです。


 これがね、良くない。

 いや、良くない会社ではないんです。良くないのはそういう意味ではないんです。


 ちょっと思い出してほしいんですよ。

 私がこれをどこで見ているか。

 

 自宅じゃないんです。

 車内なんです。

 たぶん誰一人覚えていないと思うんですけど、宇部さんはですね、車に乗ると高確率で寝てしまうのです!


 もうわかりますね?


 寝ちゃうんですよ。

 涼子さんの変化を見届けることなく!

 旦那と「どんなに変わるか楽しみだね!」なんてキャッキャしてたのに、気付けば寝てるんですよ。だって旦那がね「良いよ良いよ寝てて」って言うんですもん。「俺が黙れば松清子は寝る」とか言って、マジで黙るんですもん。やめて、マジで寝るから。


 ですがその日。

 そのBSファイン、二回目の放送でした。

 

旦那「今回こそは松清子に涼子さんの変わりようを見てほしい」

宇部「わかった! 今日は頑張って起きてる!」


 完全に気休めですが、コーヒーも飲みました。宇部さんくらいになるとコーヒーごときで眠れなくなることなんてほぼほぼありません。でもこういうのは気持ちが大事。気合が大事なのです。


 また、温子さんと涼子さんが登場し、いかに腹が冷えているといかんのか、みたいな説明が始まりました。ここから、ここからが大事だぞ。


 ですが、真剣に見れば見るほど口数も減っていくのです。ましてや旦那は運転中です。


旦那「松清子、起きて。涼子さん出て来たよ。涼子さんを見て」

宇部「ムニャムニャ……ハッ! ね、寝てた、私?!」


 寝てた?! じゃないのです。

 もうがっつり寝てたのです。

 いつもは目的地に着くまで起こさない旦那が、今回ばかりはと起こしてくれたのです! そんなに見せたかったんか。


 さて、気になる涼子さんの結果は――!?


 もう別人でしたね。

 別人級に明るくなってました。

 何せ着ている服からして違いましたから! 明るい色着てる! 腹が温まっただけで!?

 そんでなんかもういきなり登山とか始めてましたから!

 2週間で登山始めることある?! 腹が温まっただけで!?


 見届けて良かったですね。

 腹が温まるだけでこんなにも変わるのか、っていうね。

 危うく買うところでしたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る