第1429話 ブラックボックス

 私がね、吐き気がするだの腹がいてぇだのその癖出るのは普通のBだのって、騒いでたあの日のことなんですよ。その続きをね、ちょっとお話したい。


 もうとにかくですね、締め付けがアウトだっつぅことで、部屋着に着替えてお布団に入り、寒い寒いと震えていたわけです。しばらくして旦那が帰宅し、湯たんぽを作って持ってきてくれて――というのは書いたと思います。


 もう部屋着のジャージすらもですね、ちょっと我慢ならなくなってきたんですよ。いや、断じて、まーた太っちゃって腹がきついとかそんなアレじゃないです。何ならお昼何も食べてないわけですから若干腹も凹んでますって。でもほら、多少ね? ずり落ちない程度の締め付けはあるわけじゃないですか。もうそれすら我慢ならん状況ですよ。


 旦那にLINEしましたよね。


『お前の部屋着のズボン寄越せ(意訳)』


 って。


 追いはぎですよ。

 完全に。

 具合が悪いのを盾にして、てめぇのズボン寄越しなっつってるんですよ。まぁ、彼も部屋着用ズボンを一本しか持ってないわけではないのでね?


 そのLINE送ってる時点で、私はもう布団の中でMYズボンを半分くらい脱いでるわけです。


旦那「大丈夫~……? ズボン持って来たけど……自分で履ける? 履かせた方が良い感じ?」

宇部「申し訳ありませんが……よろしくお願いします……」


 つって、ペローンって布団剝いだら中途半端にズボン下ろしてるんですよ。痴女かよ。もうね、いま思い返しても普通に泣きたくなりますよ。私はなんて姿を見せてしまったんだ、って。


 ただまぁ、旦那の部屋着ズボンはですね、それはそれはもっふもふ素材且つ丈も長いので足の先まですっぽりなものですから、何かもう瞬く間に温かくなってですね。何だよ。最初っからこれ履いときゃ良かったな、って。そんでいまそのまま借りっぱなしになってますね。


 そんなこんなで湯たんぽ&旦那ズボンパワーにより、身体がちゃんと温まったのが効いたのか、夕方にはすっかり良くなってですね、そんで子ども達と一緒にお風呂に入ったわけですよ。


 そしたらどうやら子ども達、その日は学童のお楽しみ会があったらしく、どんなことをしてきたの? とインタビューしたところ、それはそれは色んなゲームをして楽しんで来たとのことで。


息子「ぼくね、『ブラックボックス』で景品もらって来たんだ!」


 眩しいくらいの笑顔でそんな報告をしてくれたわけです。そうかそうか、良かったね。えっと、さらっと出て来たけど『ブラックボックス』って何? と突っ込んで聞いてみると、アレです、アレ。


『箱の中身はなんだろな』


 はいはい、わかるわかる。

 えー、すごいじゃん、息子君! それで?! 一体どんなものを当てて、もらって来たのかな?


息子「だいこん!」


 パードゥン?


宇部「ううん!? なんて?」

息子「だいこんだよ!」

宇部「だいこん……大根?! 学童のゲームの景品で大根?!」


 あまりにも信じられなさすぎてね、ほら、『にんじん』っていうお菓子があるじゃないですか。にんじんっぽいパッケージで、中に米菓子が入ってるやつ。だからそういう感じのね? 『だいこん』っていうお菓子でもあるのかな、って。


旦那「フツーの大根。あの、スーパーで売ってる感じの1/2のやつ」

宇部「マジかよ! えっ? 上の方? 下の方?」

旦那「上の方」

宇部「よっしゃでかした!」


 上の方が甘いので子どもが食べやすいんですよね。

 いやー、助かる。

 助かるけども、いや、学童の景品で大根!?


 そんな話をしておりますと、私のこと忘れてない? とでも言いたげに娘が割り込んできました。ごめんごめん、大根の衝撃でついついお前の方のインタビューを忘れてたわ。


娘「わたしはね! ビンゴで景品もらってきた!」


 おお! やるじゃん! お前は何だ? 兄が大根なら妹は何だ?! にんじんか?! それとも芋か?!


娘「ベビースターラーメンと、ミニコーラ(コーラ味のラムネ)!」


 そっちは普通なのかよ!

 それが学童の景品だよ!

 何だよ大根って!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る