第1203話 お前らじゃないのかよ!

 もうね、我慢出来ずに見ちゃったんですよ。

 何がって、あれですよ、あれ。


 銀座ダイヤモンドシライシのCM。シリーズ完結編『再びのプロポーズ』編ですよ。


 まずね、完結編って何だ、って思ったんですよ。結婚はゴールじゃねぇぞ、何完結させてんだ。ああでもダイヤモンドシライシ的にはダイヤモンド買ったらあとはもう完結なのかな? なんて思ったんですけど、それにしては気になるタイトルなわけですよ。何、再びって……。


 前回のシライシCMもですね、読者様も実際に見てくださった方が多くてですね、なかなか共感していただけたんじゃないか、ってことでそれに背中を押されていまこれを書いてるわけなんですけど、この完結編もなかなかの破壊力で。これ、先に見たい方は一旦見て来てもらって良いですから。ただ、5分くらいありますけど。


 というわけで、もう続きを書きます。


 例の紙の指輪カップルがですね、どうやら無事結婚までなさったようで、それから数年、十数年後とかなんですかね、とりあえずそんな感じで。夫婦そろって何かしらの集まりに参加したようで、仲良く帰宅――かと思いきや、いきなり険悪なムードなんですよ。何か旦那さんの態度が悪くて、それで奥さんの方がご立腹で。


 そこで言うわけですよ。


妻「白石さんの旦那さんを見習ってよ」


 いや、『白石さん』ってお前らじゃねぇの?! これ銀座ダイヤモンドのCMだろ!? だったら『白石』はお前らであれよ!


 もうここから「???」が始まって。


 それでですよ。そんなことを言われた旦那さんだって面白くないですよ。


夫「じゃあ俺と結婚しなきゃよかったな」


 とんでもないことを言ってしまうわけですね。まぁ売り言葉に買い言葉ってやつなんでしょうけども。そしたら奥さんも「それ本気で言ってんの?」ってなるわけですよ。そこで映る、あの日贈られたダイヤモンドシライシ。左手の薬指から引き抜いて、旦那に突き返すのかなと思いきや、窓を開けて庭にぽーい!


 投 げ た ! 


 いやいやいやいや。

 突き返すだけでもね? そっとテーブルに置くだけでもね? 旦那さんには響くと思うよ? その発言を悔いるきっかけになると思うよ? そんで奥さんもそのまま出てっちゃうしね?!


 それでですよ。

 旦那さん、どうするんだろうって思ったんですよ。

 こう、ソファとかにどかっと座って、頭をわしゃっとかいて、しばらく考えたりして、そこから奥さんを追いかけるのかな(すぐに追いかけたらすぐ捕まえられるからCM的には弱いかなってことで)、って思ったんですけど、旦那さん、奥さんを追いかけず指輪を探すんですよ。


 えっ、そういうものなの?!

 私だったら追いかけてほしいんだけど。

 振り返った時に彼の姿が見えなかったら二重にがっかりですよ。お前、カフェで人待たせてめっちゃ走った癖に、こういう時は走らねぇのかよ。走って追いかけて来いよ! しかも外雨だぞ!? 傘も持ってないんだぞ?! 指輪は風邪ひかないけど、奥さんは風邪引くでしょうよ!


 それでですね、奥さんは屋根のあるバス停に避難するんですよ。ちょうどバスが着いてですね、老夫婦が降りて来るんですけど、びっしょびしょの奥さんに折り畳み傘を渡すんですよ。私達はここでしばらく雨を見ていきますから、って。その一見趣あるような理由もぶっちゃけ謎なんですけど。雨を見るって何? ちゃんと建物入って見れば良いじゃない。あなた達自分の年齢考えて?


 ていうか、その奥さんがバスを待ってる可能性もあるんじゃないの?

 確かに奥さんは喧嘩して家を飛び出したし、鞄も何も持ってないけど、その辺の事情は老夫婦知らないわけですから、普通は「この奥さん、バスに乗るのかな?」って考えるところだと思うんですよ、ここバス停なんだから。ハンカチとかタオルならまだしも、傘を渡すってことは、「これ差して帰りな」ってことですよね。この老夫婦エスパーなのか?!


 そんでまぁ、とにもかくにも奥さんはお家に帰り、雨の中ずっと指輪を探していた旦那さんと合流して一緒に探し、見つけて――という流れになるわけなんですけど。旦那さんも旦那さんでですね。ノー傘で探してるんですよ。土砂降りの中を。懐中電灯は用意したのに、傘は!?


 というのをですね、旦那に「私これ全然わからん!」と熱く語ってたんですけど、さすがは旦那ですよ。「俺にはわかる部分もある」と抜群の理解力――いやこじつけ力を発揮してきたんですよ。もう全体的に「昭和の男はなかなか素直になれないものだ(だから余計なことも言っちゃうし、奥さんも追わなかった。傘を差さなかったのは冷たい雨に打たれることで頭を冷やすため)」という力業解釈で旦那さんの行動を分析しましてですね。すげぇ、そう読み解くのか、って大変参考になったわけですが、冒頭の『白石お前らじゃねぇんかい』と、『エスパー老夫婦からの折り畳み傘』については「それについては俺もさっぱりわからない」とのことでした。

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