第1084話 それはそれ、これはこれ

 お一人様、あるいはお一家族様○個限り〜、って売り方があるじゃないですか。私なんかは、それを見ると「えっ、何何!?」って飛びついてしまうんですけど。


 だけどどうしてもその○個以上ほしい時ってありますよね。いや、その場合、全然定価で良いんですよ。たまに書いてるやつもあるんですよ。○個以降は通常価格です、みたいな。そうやって書いてる時は「あーもー全然通常価格で良いですから。まじで必要なんです」って買うんですけど、書いてないやつは、例えば100個限り、みたいな感じだったりするので、買えないわけですよ。人として。


 それでもセルフレジだと買ってく人っているんですよ。特にエラーとか出ないのかな。やったことないのでわかりません。


 それで毎回、「あぁ、全然いつもの価格で良いから二パック買いたいわ……」と思いつつ、涙をのんで諦めているのが卵です。


 毎週土曜日、卵が一パック98円なんですよ。まぁ消費税が加わると100円超えるんですけど。いつもは148円とかだったかな。そりゃもう飛びつきますわ。


 ただね、卵なんてアナタ、朝に目玉焼きを作ったら、二日半でなくなるんですよ。半って何だ。四人家族なものですから、朝ご飯に目玉焼きを出せるのは二日までなんですよ。そんで、残り二個をどうするかですよ。

 最近娘がパンの日(木曜)に『目玉焼きパン』を所望するようになりましてね。これであと一個ですわ。たまに息子も「僕も目玉焼きパンにするー」って時がありますからね。そうなると、木曜の朝で卵が0なんですよ。


 週の後半を卵無しで乗り切らなきゃならないわけです。


 いや、卵くらい追加で買えよ、って話なんですけど。98円を知ってしまったら、何か何となく148円とかで買うの悔しいじゃないですか。98円の時に、二パックめは148円ですけどそれでも良ければ、というのとは違うんですよ。それはほら、あくまでも一パックは98円で買ってるわけですから。


 別のスーパーでたまに98円とかやってる日があるので、そういう時は追加するんですけどね。


 さてそんなある日のことです。

 どこかの道の駅に行ってきたお姑さんが、『何かめっちゃ良い卵』を買ってきてくれました。日曜日のことです。土曜日に98円の卵を買っていますので、宇部家の冷蔵庫には卵が10個あります。


 そこへ、20個の卵がやってきました。


Q.さて、うべさんのおうちに、たまごはなんこあるでしょう?

A.30個

 

 突然の卵バブル到来です。

 動物性タンパク質の宝庫です。

 もう逆にこんなことになると、どうしていいかわかりません。


 とりあえず贅沢に卵を使いまくってオープンオムレツを作ってみたり、目玉焼き三昧してみたりしましたが、さすがに30個もの卵はなかなかなくなりません。心の余裕がすごい。石油王ってこんな気持ちなんだろうな。


 さて、土曜日がやってきました。

 卵98円の日です。

 ですが当然卵はまだまだあります。ここで追い卵するわけにいきません。


 で、その卵98円を見送ったわけですが。


 何だかもやもやするのです。まるで心にぽっかり穴があいたよう。何、この気持ち……。


 で、また卵を使いまくってその翌週です。

 残り五個くらいになりました。これなら卵を買っても良いよね!?


 もうね、ものすごく満たされてね。

 あぁ、私、98円の卵買ってる! 買えてる! って。

 

 あぁ私、卵が欲しかったのもあるけど、とにかく『98円の時に買う』っていうのがしたかったんだな、って。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る