第1067話 エッセイ講座

 職場の休憩室にですね、『日本農業新聞』が置いてあるんですよ。

 別に職場で取っているわけではないです。パートさんの誰かが取っていて、それを持ってきてくれるのです。ほら、瀬戸物とか買うとね、古新聞で包んだりするじゃないですか。それ用に。


 そういうのって、従業員からの寄付なんだ?! ってびっくりしました。まぁもちろんすべての小売りがそうなのかは知りませんけど、ウチの店ではそうなんですよ。寄付しているパートさんの方でも、古新聞をため込むのが嫌みたいなので、Win-Winってことなんですかね。知りませんけど。


 それでまぁ、もちろんじっくり読んだりはしないんですけど(本当に農業のことしか書いてないし)、たまたま下の方の広告が目に入りまして。


『エッセイ講座』


 目を引くでしょう?

 特に私には見過ごせないやつですよ。

 エッセイ職人として! エッセイ職人としてはね!

 現にいまだって『休憩室に置いてある日本農業新聞の広告が気になった』ってだけの話で一本書こうとしてるんですから。


 そう、それでですよ、その広告です。

 東京カルチャーセンターというところが開講している、おそらく通信講座なんですよ。


 気になる見出しはこうです。


(大見出し)日記を書くより面白い!

(小見出し)「ちょっといい話」書けます

(小見出し)半年書いて「文集」出版


 異論有りません。ええ。もちろん。

 日記を書くより面白いですよ。だって、一日の中で面白いことなんてそうそう起こらないんですから。だったらもういっそね、自分の書きたいことを好きなように面白おかしく書いた方が絶対楽しいんですから。


 ちょっといい話もね、書けますとも。

 ちょっとパンチが弱いかな? って内容でも、そこはほら、書き手のコレ次第ですしね?(さもさも自分にそれがあるかのような書き方)


 ただね、この半年書いて「文集」出版って何?

 この講座がそこまで面倒見てくれるってこと!?

 そう思いましたけど、どうやらそうではなく、半年も書いてりゃ発行出来るほどになりますよ、ってことらしく。それは何? 書店に並べられるくらいの読み物が書けるようになりますよ、ってこと? それとも、単純にページ数の話?! こちとら三年以上書いてるんだが? 全然書籍になってくれて構わんのだが? 量も申し分ないっていうか、このエッセイ、多分五冊分くらいはあるんだが?! ていうか、毎日連載してるんだから、これこのままどっかの新聞社が拾ってくれよ。


 なんてね、まだ無駄に喧嘩腰でね、そんなことを考えながらお昼ご飯を食べていたわけです。あとたぶん、このエッセイのどこかでも確か書いたんじゃないかなって思うんですけど、ここの講座、資料請求の仕方が強気で。


 ご興味のある方ははがきで資料を請求してくれ、ってことなんですけど、はがきの裏面の書き方がですね、まぁ普通に自分の住所氏名電話番号、あとなぜか生年月日も必要なんですけど、そこはまぁ良いとして、ほら、ここ、色んな講座があるんでね? ちゃんとそのエッセイの講座の資料をください、って書かないと、受け取った側もどれの資料を送れば良いのかな? ってなっちゃいますんで、エッセイの資料ください的なことを書くように、って例を載せてるんですが――、


『エッセイ講座の資料送れ 〇〇A係』


 その例がこれで。


 送れ、って。高圧すぎない?


 いや、あくまでもね? これは例ですし、カルチャーセンターさんの方では、精一杯へりくだって書いてるんだろうな、ってのもわかるんですけど。

 

 エッセイ講座の資料送付希望とか、そういうのじゃ駄目だったのかなって。書くよ? 真面目な人はこのまま書くよ? それとも何? ここでアドリブ利かせられるかって部分も見られてるの? そこからエッセイ講座スタートしてんの? 


 そんでちなみにこちらの講座、一括払いで39,800円(税込み)とのことでした。


 高くない?

 それともこれは安い方なの?

 

 それより私のエッセイ読んだ方が良くない? こっち0円だよ? ただ、何の勉強にもならねぇけど。

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