第1064話 意味はないけど可愛い

 方言って、そこで住む人にとってはものすごく便利な言葉ですよね。標準語だと結構な文字数かかるところを、ばしーっと端的に表すことが出来るわけですよ。


 例えば、


・いずい

・うるかす

・こわい


 この辺りは、個人的に標準語だと説明が面倒くさいなぁと思っております。


 特に難しいのは『いずい』ですよ。もう得意のWikipediaさんにヘルプを求めましたもん。


『いずいは、北海道や東北地方の人々によって使用されている方言である[1][2][3]。意味は「しっくりこない」「居心地が悪い」「フィットしない」「状態がよくない」などという意味』

『また、北海道では特に目や歯などがゴロゴロしていたり、ゴミが入ったりしているときなどに、「不快」という意味を込めて使うことが多いとされている』※Wikipediaより引用


 ですって。私もやはり後者の目や口に〜の方でよく使いますね。


 『うるかす』は水に浸してふやかす、『こわい』は身体がしんどい状態でして、この言葉が伝わればぱっと意思疎通が出来るのに、「お茶碗うるかしとして……じゃなかった、えーとお水につけてふやかしといてー」とか「ちょっといま身体こわくて。違う違う、そっちの怖いじゃなくてさぁ」みたいな。


 標準語に直しにくいのは方言あるあるですよね。


 そして、これはたぶん北海道〜東北地方の方言なんじゃないのかな、っていうのに、動詞にくっつけることにより、『〜することが出来る』という意味にしてくれるやつがあるのです。つまり、英語でいうところの『CAN』ですね。


 それが、『さる』です。否定形は『さらない』。


 書く+さる(さらない)→書かさる(書かさらない)、で『書ける(書けない)』。

 

 こんな感じです。


 そっちの方が文字数多いじゃねぇか、ってのはまぁご愛嬌で。


 このペン書かさる? あー、このペン書かさらないわー(たぶんインクがない。捨てろ)。


 こういう風に使います。


 それに関しては秋田でも全然通じましたので、あーやっぱり北海道と東北の方言って似てるんだなーって、まぁまぁ油断してたわけですよ。


 そしたらここ最近ね、『〜たい』っていうのをよく聞くようになって。

 違います。九州のやつじゃないです。

 これは、擬態語っていうんですかね、『ぺらぺら』とか『すべすべ』とか同じ言葉を二回繰り返す感じのやつにくっつく(宇部調べなので当たっているかは自信がない)やつのようです。


 『ぺらぺらたい』とか『すべすべたい』とか、そんな感じで使います。

 じゃあ、どんな意味になるのかって、話になるじゃないですか。その『たい』がつくことによって、『ぺらぺら』とか『すべすべ』部分にどんな意味が加わるか、って。『さる(さらない)』がくっつくことによって『~することが出来る(出来ない)』の意味が付加されたように、何かあるんじゃないか、って。


 ないんですよ。

 もうそのまま、『ぺらぺらしている』『すべすべしている』という意味なんですよ、たぶん。


「この毛布、ぺらぺらたい。寒い」であれば、「この毛布、ぺらぺらで寒い」という意味ですし、

「赤ちゃんのお肌ってほんとすべすべたいわ~」なら、「赤ちゃんのお肌って本当にすべすべね」という意味になるわけです。


 だとしたら、それ本当に必要なの?!

 そんなこと、思ってても言えませんけど(ここに書いちゃったけど)。

 

 ただ、聞いてて何か可愛くないですか?

 方言って、その土地の人達が使う謎の言葉ではあるんですけど、それだけに萌えの要素も大きいじゃないですか。


 特にこの『たい』、どちらかといえば、『たい』としての使用よりも『たく』とか『てく』と形を変えて使われることが多いんですよ。


 さっきの例文でいうと、


「この毛布、ぺらぺらてくて寒い」


 となるわけです。

 『ぺらぺらてくて=ぺらぺらで』ということですね。もちろん意味はおんなじです。


 もうこうなるとですよ。

 『ぺらぺら』の時点で同じ言葉を繰り返してるわけじゃないですか。そこへさらに『てくて』ってちょっと『てくてく』に似た感じの言葉が合わさってくるわけですよ。ちょっと可愛くないですか?! ぺらぺらてくてくしてて可愛くないですか?!(私何書いてんだろう)


 正直、意味を考えれば別にいらないんじゃないのかな、って思うような『たい』なんですけど、何かもう可愛いから良いや! って気持ちに最近なってます。

 

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