第957話 上の女
最近、『親ガチャ』なる言葉を知りまして。あれですね、『子は親を選べない』的なやつと言いましょうか。ならばいつか、「ウチの親は当たりだったな」と思ってもらいたいところ。
別にこの言葉をね、良いとか悪いとかそういうんじゃないんですよ。そんなことを言ったら生まれてくる子どもだって選べませんし、もう性別からして選べないんですから。
蓋を開けてみるまで、いや開けてみても年々「えっ、お前そういう一面もあるの!?」って驚きの連続ですからね。ウチの親も、初めての家庭訪問で「松清ちゃんはとても明るくて面白い子ですね」と担任から言われた時、腰を抜かさんばかりに驚いたらしいですから。
母親「先生! ウチの松清は家では全然しゃべらないんですよ!? いるかいないかもわからないほどで!」
担任「そんな! 松清ちゃんはとてもよく喋りますよ!?」
母親「……?? ……???」
担任「……?? ……???」
その時はね、明るい子だったんでしょうね。高校くらいからですかね、コミュ障が酷くなったのは。外では明るかったんですね。なのに家ではしゃべらない。
だから母はまじで、別の子と間違えてんな、先生、って思っていたそうです。
さて、そんなこんなで開けてびっくり玉手箱状態の我が子達です。それでもまぁ一応腹の中からの付き合いでもありますし、それなりに次の行動は予測出来たりもするんですが、やはりまだまだ解き明かせないヴォイニッチ手稿。今回も予測出来ない事をしてくれました。
先月ですね、祝日がやたらとあったじゃないですか。
祝日となればまず旦那はお休み。そして当然のように学校や保育園もお休み。これであとは私の休みが重なれば宇部家丸ごとお休みとなるわけで。そう、今回は私のお休みもばちこーんと被ったんですね。
よし、お蕎麦を食べに行こう、と。
別にあれです。有名店とかじゃなくて。
あんまり人の多いところ行きたくないよね、ってことで、近所のお蕎麦屋さんに行ったんですよ。
そしたらですね、そこ、子ども用みたいなのがなくて。あー失敗したなーって思いつつ、まぁ残したら親が食べればいっか精神でメニューを広げたわけです。
すると、息子君は「ぼく、これ!」とあっという間に決めました。彼の小さな指が示したのは――、
かけ(冷やし)!
一番安いやつ!
おい! もっと良いの食え! 親の懐事情気にしてんじゃないよ!
などと思いましたし、実際「いや、もっと良いの頼みな? お揚げ乗ってるやつとかさ、天かすのやつとかさ? ほら、こっちには天ぷらも乗ってるよ?!」って言いましたとも。
けれど彼は譲らない。「ぼくこれが良い」と譲らない。
そう、彼は親の懐なんて気にしていないのです。
本当にかけ蕎麦が食べたいだけなのです。たぶん、あんまり具が乗ってると食べきれないからでしょう。賢い。
そして、そんな中、最も長考していた娘ちゃんが「わたしこれにする」と選んだのは――、
上天ぷら! 一番高いやつ! 色んな天ぷらが別添えになってるタイプで、えーっと、兄さんのやつの三倍くらいします!
宇部「娘ちゃん、さすがにこっち(※)にしたら?」
※天ぷら蕎麦……お蕎麦の上に海老天。若干安い
娘「ううん、こっち」
宇部「まぁ……良いけど……(絶対海老天しか食わねぇな、残りは頼むぜ旦那)」
旦那「娘ちゃんが食べたいの食べなさい(任せろ)」
予想通り、娘は海老天しか食べませんでした。
そんでいきなり天ぷらって言い出したのは、恐らく、鬼滅の刃で猪君が天ぷら食べてたからだろうな、って。後から気付いたんですけどね。
しばらく彼女は『上の女』って呼ばれてましたね。
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