第929話 走れ走れ〇〇〇の

 働く車が好きですね。たぶん男の子はみんな好きなやつ。いや、私は女なんですけども。


 パトカーとか消防車とかね、そういうのも好きなんですけど、ショベルカーとかブルドーザーとかも良いですよね。近所で工事していると、ほんとは立ち止まってじっと見ていたい私です。邪魔になりますし絶対不審者だと思われるからしませんけど。


 これでたまたま事故やら何やらあったら「数日前、こちらをじっと見つめている女性がいた」とか警察にタレコミされるんですよ。違います! 私はただの働く車大好きおばさんです! ってね。


 その点、小さい子ども(特に男児)を連れていると安心です。男児は働く車が大好き。パトカーに対して堂々と手を振ったり、敬礼をしたり出来るのも彼らの特権です。息子もやはり働く車が大好きですから、「ママ、ちょっと見ていこ?」とか言ってくれます。ナイスだ息子! ちょうどママも見たかったところさ!


 それでですよ。この手の働く車とか重機関係を好きになってくれるとですね、やはり嬉しいのは旦那ですね。旦那はそこまでがっつり重機を扱う人間ではないんですけども、現場にはダンプカーで向かいますし、バックホー(油圧ショベル? そんなやつ)も使いますので。

 

 子ども達が小さい頃、近所にお買い物に行くと、たまたま旦那の現場を通りがかったりして、ここぞとばかりに「パパ働いてるよ! かっこいいね!」とアピールしまくったものです。娘はいまでもその時の話をしますね。パパかっこよかったよねーって。いまもかっこいいが? 過去形じゃねぇ。進行形だが?


 それでですよ。

 仕事中の旦那の移動は先述の通りダンプカーなんですよ。いす●の白いやつ。


 ♪はーしれはしれー、い●ゞーのトラックー♪ 


 これね。

 個人的には『トントントントンヒノノニトン』も好き。リズムが最高ですよね。


 そう、それでですよ。

 休みの日ですと、私の活動時間と旦那の移動時間(お昼休憩のため実家に向かうとか)が重なることが多くてですね、チャリで爆走(いうほど爆走してない)している時にすれ違ったり、なんてことがよくあるのです。狭い市ですから。

 

 そんでそのダンプにはですね、旦那だけではなく、義父と弟さんも乗ってるんですよ。前に3人乗れるやつなんですね。


 つまりね、どすっぴんでクタクタの部屋着(ほぼ寝間着)でチャリを漕いでたりした日にゃあもう、赤っ恥なわけですよ。旦那はあんまり気にしなそうですけど。


 だから、念には念を入れて、まぁ、すっぴんではあるものの(どうせそこまで見えまい)、Cランクくらいの服装(Aランク→学校や保育園に行く時の服、Bランク→家族でお出掛けする時の服、Cランク→とりあえず下はジーンズ)で出掛けるわけです。


 それでですよ、向かいから旦那が運転する白いダンプカーが走ってきたら、いかにもエエ奥さん風の微笑みですわ。これで完璧。


「へー、松清さんって、休みの日も案外ちゃんとしてるんだね」


 これですよ! 同乗している義父と弟さんから欲しい評価は!

 何も常にバリバリお化粧して余所行きの服を着ているような隙のないパーフェクトウーマンじゃなくて良いわけです。せめて、ちょっと気は抜いていつつも、それなりの(ギリ大人の女性としての)アレはあるのね、みたいな。


 これならきっと旦那も安心ですよ。いやー、ウチの嫁、案外ちゃんとしてるんだよね、って。家の中では案外ちゃんとしてないけどな!


 ただ問題はね、そもそも私の視力がクソなため、白いダンプカーにとにかく微笑みまくるおばさんになっていることです。かなり近くまできてくれないと運転手が判別出来ないのです。これは愛の力をもってしても無理。下手したらい●ゞですらない時もありますから。


 白ダンプ運転手達の間で「白ダンプ大好きおばさんがいる」みたいな都市伝説が生まれてやしないかとヒヤヒヤですね。


 ちなみに、旦那だとわかった瞬間には手も振ります。こればかりはきちんと判別してから振ります。

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