第930話 マジシャン
先日、仕事を終えた旦那が、「今日、すごいものを見た。すごいもの、っていうか、人なんだけど」って言うわけです。
滅多なことでは動じないウチの旦那が言うんですから、これは期待出来るぞ、と。
もうウチの旦那の冷静沈着ぶりと来たら大したものでですね、娘の誕生日ケーキを予約しにバスキンロビンス(宇部さんはかっこつけだから、サーティワンアイスクリームのことを『バスキンロビンス』って呼びたいんだよ!)に行った時、そこに置いてあったマスコットキャラらしき犬のぬいぐるみの名前が『サーティワン公』だったことに驚いて思わず写真を撮ったほどなんですよ。
何かほら、『ワン公』って、猿を『エテ公』とか、不良が先生のことを『先公』って呼ぶような感じの蔑称に見えて「良いの?!」ってびっくりしたらしくて。全然冷静じゃねぇ。まぁ、ほら、『貴公』とか『秀吉公』とか『忠犬ハチ公』とかね、そういう時にも使うやつだから、むしろそっちの意味なんでしょうけども。どうしても『エテ公』と『先公』の印象が拭いきれず……。
って、そんな話は良いんですよ。こんなところで小ネタを消化するな。
そうそう、その『すごい人』なんですけど。
ほら、たまにいるじゃないですか、自転車とかで日本を縦断してる人。
それ系の人らしいんですけど。
宇部「へー、何、自転車?」
旦那「いや、徒歩」
宇部「徒歩!?」
旦那「徒歩っていうか、リヤカー」
宇部「リヤカー?! 正気か?! それはあれ? その寝泊まり道具みたいなのを積んでるってこと? それならまぁ自転車よりたくさん積めるだろうし良いのかもしれないけど」
旦那「いや、違うんだ。そのリヤカーもさ、なんていうの? ラーメンの屋台みたいな感じになってるんだけど、そこにさ、『着物マジシャン』って書いててさ」
宇部「着物マジシャン?!」
どうやら150㎏もあるリヤカーを引いて日本を縦断していらっしゃる方らしく。彼がちょうど秋田県を通過しているところに遭遇した(ダンプですれ違った)ようで。
ただ、旦那が言うには。
旦那「でもさ、おかしいんだよ。恰好がさ、アラジンみたいな感じだったんだよね」
宇部「アラジン!? 着物マジシャンじゃないの? 設定が破綻してる!」
旦那「うん、着物マジシャンってがっつり書いてたんだけど」
宇部「まずその『アラジンみたいな感じ』ってどういうことなの?」
旦那「アラジンってさ、裸にジャケットみたいな感じじゃん? 袖なしの」
宇部「そうだね。ほぼほぼ素肌さらしてんね。ボタンなしのチョッキみないなの着てんね」
旦那「そんな感じだったんだよ」
宇部「裸にチョッキ?!」
旦那「そう」
宇部「それで『着物マジシャン』名乗るのはどうなの?」
旦那「だよねぇ。何かTwitterもやってるらしくてさ」
宇部「ちょっと見てみよ!」
で、チェックしてみたんですけど、何てことはない、彼が着ていたのは作務衣らしく、雨でぬれてたから羽織るだけにしてたっぽいです。それでアラジン風に見えてたようで。
どうやら色んな人に差し入れをもらいながら頑張っているらしく、旦那は「追いかけてビールとか差し入れれば良かった!」と言っていましたが、この季節ならアルコールよりもスポドリじゃないのかな。
現在は秋田を通過して山形の方にいるようです。
お身体に気を付けて頑張っていただきたい。
ただ、コ□ナとか大丈夫なのか……?
何かあった時どうするんだろう……。
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