第911話 馬と牛

 お盆にまつわる話を一つさせていただこうかと思いまして。

 大丈夫、ホラーとかじゃないです。何せ宇部さんがホラーとか書けるわけないんですから。


 いや、精霊馬の話なんですよ。ナスとキュウリのやつですね。恥ずかしながら、私これの名前すら知らなくて、『せいれいうま』かと思ってました。『しょうろううま』って言うんですね。


 ウチの地域だけなのか、それとも北海道がそうなのかは知りませんが、実家の方でこんなナスとキュウリ、見たことないんですよ。漫画の中の夏休みが8月31日までっていうのと同じ感じで(北海道の夏休みは8月の中旬くらいまでなので、そろそろ終わる)、内地の風習でそういうのがあるらしい、というイメージでした。だから、キュウリの方が馬でナスの方が牛だなんてことを知ったのも大人になってからですし、早く帰って来てほしいから行きは馬で、帰りはゆっくりしてほしいから牛で、みたいなのも正直知りませんでした。


 余談ですけど、あの送り火? とかいうやつもやったことないです。お盆っていうのはとにかく親戚がみんな集まって(ウチは本家だったので)、お坊さんが来て、ポクポクチーンってやるイベントだと思ってましたから。恐らく、いま北海道に住んでいたとしてもそういう認識だったと思います。


 そんで、いまネットで調べてみましたら、一応北海道でもそういう風習はあるみたいな(北海道、東北地方でも~みたいな)記述があったんですけど、Twitterで『精霊馬 北海道』って検索したら、道民と思しきTwitter民は「精霊馬なんて風習は北海道にない」っていうのがほとんどだったりして、「???」となっているところです。


 とまぁ、そんな背景がある、という上でなんですけど。

 私この牛と馬のシステムが謎でですね。


 確かにご先祖様(というか、だいたいイメージするのは大好きだったじいちゃんとかそういう人)には早く会いたいですから、馬に乗ってばびゅーんと帰って来てほしいです。それはわかる。


 いや、帰りもお盆ギリギリまでいてもらって、馬でばびゅーんと帰ってもらうんじゃ駄目なの?


 私の中でこの『お盆』というのがですね、完全に『お盆休み』のイメージなわけです。あの世で暮らしていたご先祖様が、三日とか四日とか(そもそもお盆って何日間なのかもよくわからん)連休をもらってこっちの世界に帰省する、みたいな感じというか。


 となるとですよ。

 この移動手段をですね、馬=飛行機、牛=船で置き換えるとですよ(私が北海道に帰省する時の最速と最遅の移動手段)。


 飛行機だと1時間もかからずに着くんですけど、船だと丸々一日かかるわけです。そりゃあのんびり船旅ってのも良いのかもしれませんが、その一日はただただ移動のみなわけですよ。どこかにふらっと寄れるわけでもないですし。まぁ船は極端すぎますが、これが鈍行列車だとしてもですよ。途中でふらっと降りてちょっと観光して~、なんてやってたら、お休み終わっちゃうんですよ。家に着いたら即仕事始まっちゃう。


 駄目なの? 往復馬じゃ駄目なの? だいたい往復でとった方が安くなるじゃん。割引あるじゃん? 何ならホテルとセットだったりするじゃん? 


 まぁ、牛にしろ馬にしろ、ただ乗ってるだけじゃなくて操縦しないといけないわけですから、馬より牛の方が疲れずに帰れるとかそういうのがあるのかもしれないんですけどね。私はもうなるべく早く来て、そんでギリギリまでずーっといてほしいのにな、って。大好きだったじいちゃんのことを思い出して、ちょっとしんみりしちゃいましたねぇ。


 私の時は往復馬を用意してくれ。

 大急ぎで帰って、そんで、ギリギリまで居座って嵐のように帰るから。

 ちゃんと馬に乗れるようにしとくから。


 

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