第877話 簡単な算数?

 ウチにね、2ℓのミネラルウォーターのペットボトルが1ケース(6本)あるんですよ。

 宇部家では、これはかなり珍しいやつでして。


 何せ水なんて、蛇口をひねれば美味しいやつが無限に出てくる(無限じゃないしただでもない)んですから。


 じゃあ何であんのよ、って話になるんですけど、2年くらい前ですかね、ここ秋田県にもすんげえ台風が直撃するらしい、っていう情報が飛び込んできた時があったのです。

 窓に養生テープを米の字みたいな感じで貼ると、割れた時に飛び散らなくて良い、みたいなライフハックが出回った時期ですね。貼ると割れない、と解釈した人達がウチの店にわらわらとやって来て、何かしらの発注ミスで大量にあった養生テープを根こそぎ買っていってくれたのが大変ありがたかったです。こちらも、この波に乗るっきゃねぇ! とばかりに並べましたから。


 で。

 一応周りに乗せられてもしもの時用にその水を買ったわけです。いや、備蓄はね、あった方が良いのはわかってるんですけども。


 別に長期保存用とかではないんですけどね、開栓しなければそこそこもつじゃないですか。だけど、5年も6年ももつわけじゃないので、いよいよ来月賞味期限を迎えることになりましてね。やべぇ飲まんと、と。


 そこでね、わたくし、ピコーンとひらめいたわけです。

 そう、誰でも3秒で思いつくようなやつをさもさも新大陸発見ばりの大仰さでね、声高に言ってやったわけですね。


「ねぇ、これであの麦茶の濃縮缶のやつ使ったらさ、麦茶、秒で作れちゃうんじゃない!?」


 舞台女優くらいのオーバーな演技でね。ここからミュージカルが始まるんじゃないかってくらいのアレでね、言ってやりましたとも。


 これはもう伊藤園とSUNTORYからCMのオファーが来ますよ。2社が私を争奪戦ですよ。やめて、私のために争わないで。


 とまぁ、そんな茶番を挟んでですね。何にせよもったいないですから。よーし、やってみよー、って。


 ここで立ちはだかるのが麦茶二大巨頭、伊藤園の健康ミネラル麦茶と、SUNTORYのやさしい麦茶。ティーバッグタイプは伊藤園さんのお世話になってるんですが、個人的にはやさしい麦茶が好き。というか、麦茶そのものが苦手なので、少しでも優しい方が飲みやすいというだけですが。


 でも実際にメインで飲むのは子ども達だし(私ははと麦茶とプーアール茶のブレンドがある)なぁ、と思いつつ缶をチェック。


 するとですね、やさしい方のやつには、


「1ℓの水で作ると濃い味、2ℓの水で作るとすっきり味」みたいなことが書かれていたんですよ。成る程、そういう作り方も出来るのね。というか、ウチの麦茶ポット、900㎖のやつと1.6ℓのやつなんですよ。わかります? そもそも2ℓで作れないのです。


 おいおい企画そのものに無理があんじゃねぇのか、と演者サイド(お茶ポットさん達)がやいやいと騒ぎ始めました。


 いやいや、待ってくださいよと。それなら2缶使ってこう、うまいこと分ければいけるんじゃないでしょうかと。ポット2つで2.5ℓなわけですから。そんで足りない分は水道水を入れる感じで。そしたら、良い感じに「割とすっきりめだけどそこそこに濃い麦茶」が出来上がるんじゃない? って。


 というわけで、伊藤園さんの方は特にそういうことを書いていなかったので、こちらは完全に2ℓ用なのかもと思い、やさしい方をチョイス。 


 さぁ、用意したのは0.9ℓと1.6ℓ(わかりやすいように単位を揃えてみました)のポット。そしてやさしい麦茶濃縮缶2本にミネラルウォーター2ℓ&水道水です!


 簡単な算数ですよ。えっと……簡単な算数なんでしょ? えーっと、何対何に分ければいいのかさーっぱりなんですけど。


 よし!

 目分量だな!

 わっかんねぇわ、算数!

 ごめんな、子ども達! ママ、算数からっきしなんだ!


 そんで案の定、かなり薄めの0.9ℓ麦茶とちょっと濃いめの1.6ℓ(+水道水少々)麦茶が出来上がりましたとさ。めでたしめでたし。

 

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