第779話 呪い

 爽やかな朝に禍々しいタイトルで申し訳ないんですけどもね。


 何かこう……あるんじゃないの? って思ってしまうような出来事が、進行形で発生しているのです。職場で。


 一応諸々濁して書きますが。


 最初はパート①さんが急に身体のある部分に不調を訴えまして、働けなくなったのです。元々高齢の方で、そろそろ引退される予定だったんですけど、それが前倒しになった感じというか。

 それがちょうど冬の繁忙期で。ベテランさんですからね、もうてんやわんやですよ。予定ではその繁忙期を過ぎてから引退するはずだったんですけど。


 そしてその次。

 パート②さんが出勤時に転倒しまして。それでも普通に働こうとしたのですが、痛みが酷いので早退して病院に行ったわけです。

 そしたら、折れてまして。全治数ヶ月。

 それもまた冬の繁忙期のことでして。

 彼女もまたベテランさんですので、もうてんやわんやです。


 この店基本的にベテランさんばっかりなんですよ。その当時私が一番新人だったんですけどそれでも5年いますから。10年20年働いている人がザラなんですよ。


 さらに続きます。


 今度は正社員Aさんです。

 何かいきなり手術することになったので数ヶ月お休みするらしい、という情報が回ってきました。例えば体内のどこかしらに腫瘍が見つかったとかそういうのではなく、整形外科系のやつです。持病があるとかは聞いていないので、やはりこれも急に来たらしいのです。


 そして今度はパート③さんです。

 業務中に、普段は何も置いていないはずの小部屋に荷物が放置されていて、それに躓いて転倒。さすがに折れるなんてことはなかったのですが、パンパンに腫れて、翌日は欠勤しました。もちろん彼女も大ベテラン。冬の繁忙期は終了しておりましたが、それでもかなりの痛手です。


 それでですよ。

 まぁ、それくらいならですね、なくはないというか。従業員がたくさんいれば、怪我なんて大小様々あるじゃないですか。それこそ擦り傷切り傷軽い打撲くらいは毎日のことなんですよ。ハサミやカッターもよく使いますし、重いものも運びますんで腰痛ともお友達ですから。


 ただ、ここまで「呪いじゃないのか」って騒ぐのにはもちろん理由があるわけですよね。


 上記の不調やら怪我やら、なんです。


 といってもそこまでピンポイントではないんですけどね。手とか足とか腰とか、そういうざっくりとした部位ではあるんですけど。


 パート②さんまではまだ「いやー、②さんもかぁ、続きますねぇ」って呑気に話してたのが、社員さんにパート③さんともなりますと『呪い』説がにわかに現実味を帯びてきまして。


 次は私なんじゃないか、って皆ざわつくざわつく。


 という話を旦那にしますと、


「大丈夫」


 と何とも心強い返答。


 いや、何を根拠にアナタ。


旦那「そんなこともあろうかと、俺が先にやっといた」

宇部「先に? 何のこと?」

旦那「こないだ仕事中に側溝に落ちて、結構ガリガリに皮膚削れたじゃん」

宇部「そういやそんなことがあったね」

旦那「なので、松清子の分は俺が引き受けたから!」

宇部「お、おぉ……?」


 とにかくどうやら私の分は引き受けてくれたらしいので、ほっと一安心していたわけですけど。


 先日、仕事中にですね、こう、しゃがんでちょっと奥の方にある商品を前に出そうとしたら、関節がビキビキーって。

 その直前までは何にもなかったのに、いきなり来たんですよ。別に特殊な曲げ方をしたわけでもなかったんですけどね。


 もうね、脳裏によぎるのは、


「やはり旦那では駄目だったかー。私も明日欠勤するのかな。ここから腫れたりするのかな」


 でした。

 今日、帰宅後も普通に家事とか出来るのかしら、なんて考えたりして。


 ただ、そのビキビキは一瞬だったんですよ。そこから痛むこともなく。


 何だったんでしょう。

 やはり一回は自分で食らっとけ、旦那に背負わせてんじゃねぇぞ、ってことなんでしょうか。


 とりあえず私は元気です。

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