第771話 『尊い』

 この言葉って、割と最近よく使われるようになった印象なんですよ。別に新しい言葉じゃないんですけどね。まぁあくまでも私の印象ってだけなんですけど。


 何か、こう……主に腐女子の方々がよく使ってるイメージといいますか。腐女子に限定するのもどうかと思うんですけど。でもなんか、推しに対して拝みつつ「尊い……」って言ってるイメージ。ちなみにこの『推し』もある日突然ガンガン使われ始めたイメージです。


 まぁそんなのは置いときまして。


 もう私が『尊い』について語ろうと思ったら、アレしかないわけですよ。


 この世に生まれ落ちた――ていうか私が産んだ――天使こと、スウィートピーチヒップの息子君&スウィートピーチほっぺの娘ちゃんですわ。どちらも身体の一部に桃ちゃんがあるわけです。息子君はめちゃくちゃインドア派の癖にどういうわけだか100点満点のプリっケツですし、娘ちゃんのほっぺは、色、ハリ、質感どれをとっても一級品で、ほっぺ界で天下とれんじゃね、ってくらいですから。


 よっしゃ私のお前達、頼むぜ尊いエピソード!!


 と思ってここ二日ほど泳がせてみたんですけど。

 あっれぇ、おっかしいなぁ、何にもないぞ? いや、存在だけで尊いんですけど、何でしょうね、パンチの効いたエピソードがないんですよ。


 もう仕方ないので、そんなにパンチは効いてないんですけど、いまのところ一番尊いな、って思う息子のエピソードをぶっ込んでおきます。


 息子、どういうわけかピーマンが好きなんですよ。

 私の子どもの癖に、あんな『子どもが嫌いな野菜ランキング殿堂入り』みたいな緑の悪魔を美味しいって食べるわけです。


 とはいえ、私のピーマンレシピなんて、そもそも私自身ピーマンのことをそんなに好きなわけでもないですから、味付けが濃い料理ばっかりなんですよね。

 ピーマンメインの料理ですと、青椒肉絲(もちろんこういうのはクッ〇ドゥを使う)ですとか、ピーマンの肉詰め(中までしっかり火が通ってるか心配なので、めんつゆでしっかり煮込む)、無限ピーマン(ごま油と鶏がらスープの素とシーチキン、マジで無限に食える)、玉ねぎとシーチキンをマヨネーズで炒めたものを詰めてさらにチーズを乗せて焼いたやつ(ピーマンはサッと茹でた方が好き)くらいしかないわけです。


 だからもう、タレとか、肉とか、ごま油とか、シーチキンとか、チーズに助けられまくってる感じですし、さらには皆さんもご存じの通り息子は優しさが天元突破してるタイプなので、私(作った人)に気を遣って美味しい美味しい言ってるんだろうな、って思ってたんですよ。娘は死んだ魚みたいな目で食べるんですが、息子はマジで何でも美味しい美味しいって食べるんですよね。


 だからきっと、本当はピーマンなんてそんなに好きじゃないけど、肉とかシーチキンは美味しいし、美味しいって言ったらママも喜ぶし、みたいなこと考えてるんだろうな、って思ってですね。もうなんて健気な子なんだろう、ごめんね、明日はもうガツンとした肉(ただし鶏むね)出してやるからな、なんて思ってたんですよね。


 そしたら。


 土曜日、お昼休憩中の旦那からLINEで写真が送られて来たわけです。

 土曜は学校が休みなので息子は旦那の実家で過ごしておりまして、旦那はお昼ご飯を実家で食べているものですから、毎週土曜のお昼は息子の写真が送られてくるのです。


 そこには――、


 ピーマンの天ぷらを美味そうにほおばる息子の姿が!!


 いや、ピーマンの天ぷらって、それはもうほぼほぼピーマンじゃん!? ピーマンに衣つけて揚げただけのやつじゃん?! それの美味しさがわかるのって大人じゃないの!? ちなみにママはまだわからないんですけど!?


 その昔、親戚の子どもが生のピーマンを美味しそうにつまみ食いしてて、「うちの子達、生の野菜が好きなのよ」ってそこのおばさんが言ってたのを「うっそだろ。さすがにピーマンはねぇよ」、って思って見てたんですけど、我が子に対しても思わず「うっそだろ」って言いましたわ。お前マジかよ。


 だから、これ、もうあれだな、って。

 ママに気を遣ってるとかそんなんじゃなかったな、って。

 もうこいつ純粋にピーマン好きなんだな、って。


 とまぁ、そんな息子がマジ尊いな、って。

 しまった、娘の尊いエピソードねぇじゃん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る