第753話 何でも知ってる

 何かもうとにかくお姉さんぶりたい娘です。


 何でもお手伝いしたがるんですよ。これがまぁお片付けとかそういうのならありがたいんですけどね、彼女がもっともやりたいのは、料理なんですよね。


 もうね、ぶっちゃけ一番勘弁してほしいやつ。


 ただ、私の場合は皆が帰ってくる前にある程度作ってしまうので(食べる直前に温めたり仕上げたりする感じ)、彼女の出番はないわけです。

 ところが、私だけ仕事の日とか遅番の日は旦那が作ってくれるものですから、そういう時はもうウッキウキでお手伝いするわけですよね。


 そんで、もうにまにましながらひそひそするわけですよ。


娘「パパ、ママに今日のご飯が美味しいかちゃんと聞いてね(ヒソヒソ」

旦那「わかった(ヒソヒソ」

娘「それで、美味しいって言ったら、誰が作ったと思う? って聞いてね(ヒソヒソ」

旦那「わかった(ヒソヒソ」


 この辺のやりとり、全部聞こえてるんですけどね。

 

 手伝ったといってもですよ、もちろん包丁で切るとかそういうのではないわけです。味付けに関わったとかでもないわけです。もうある程度炒められたお肉をさらにちょいちょいとお箸でかき混ぜたとかそういう程度なんですよ。それでも彼女的には「おりょうりをした!」にカウントされるらしくてですね、それはそれは誇らしげに「今日の料理は一から十まで私が作りましたけど?」みたいな顔してるんですよ。


 まぁ混ぜるだけ系の素を使ったやつですんでね、もう間違いなく美味しいものですから、こちらとしても自然な感じで「うわぁ~、今日の○○美味しい~!」ってね。もうやらざるを得ませんから。期待されてますからね、この演技を。もうやるっきゃない。オスカー女優ばりにやるっきゃない。


 そんで気を良くしたんでしょうね、その日はもういつにも増してウキウキしてまして、食後も、用もないのにキッチンをうろうろしてみたりして、後片付けをする我々にちょっかいを出してくるわけですよ。


 それでですね、私が髪を乾かすのにそこをしばらく離れておりますと、何やら娘と旦那が向かい合っておりまして、旦那がしきりに「すごいねぇ」って言ってるわけですよね。何、娘の何がすごいって?!


旦那「それじゃあさ、次はロシアについて教えて。ロシアの有名な食べ物って何?」

娘「ろじあん? ろじあんね、いいよ」

宇部「(ろじあんってどこだよ。ロシアだよ。ていうか何の話?)何してんの?」


 こそっと旦那に尋ねますと、どうやら娘が急に物知りぶりだしたらしく、「わたし何でも知ってるから、聞いて!」と言い出したようです。


娘「ええとねぇ、ろじあんの食べ物はー、おそば」


 お そ ば ! 


娘「あとラーメン」


 ラ ー メ ン !


 麺類ばっかりだな、ロシア!


旦那「成る程ね。ママも聞いてみたら。娘ちゃん、何でも知ってるから」

宇部「(やべぇ、こりゃあ一ネタもらったな)よぉし、そんじゃあ娘ちゃん、中国の食べ物について教えて」

娘「ちゅうごく? いいよ! ええとねぇ、ちゅうごくはねぇ、まずはおそば」


 またおそばかよ! お前そんなに好きだった? どっちかっていうとうどん派だったろ!


娘「それと、餃子とかぁ、うどんとか」

宇部「おお、餃子! 餃子は合ってる!(結局うどん出て来ちゃったけど)」

旦那「良いぞ娘ちゃん!(お前ほんとうどん好きだな)」

娘「それから、フランスパンと~」

宇部「フランスって言っちゃったよ!」

旦那「確実に他国のパン!」


 もう得意気にね、私何でも知ってるのよ、って。ちなみに、彼女曰く、アメリカのバイデン大統領の好きな食べ物はチーズの乗っかったハンバーグと、いちごのアイスクリームだそうです。バイデンさん、可愛いな。

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