第742話 息子が目覚める

 さて、昨日も息子の話だったのに今日も息子の話なのかよ、って感じなんですけども。ええ、息子の話です。


 先日も学童保育にお迎えに行った旦那から、「今日はHちゃんとMちゃんからモテてました」という何かもう業務連絡みたいなモテエピソードをいただきました。両手をにぎにぎされていたそうです。何なのお前。何かご利益とかあるの? ママ毎日お前の手を握ってるんだけど、その辺どうなの?!


 とまぁ、そんな話はさておいてですね。

 可愛い可愛いウチの僕ちゃんももう8歳なんですよ。

 身長はですね、まぁぶっちゃけクラスでも小さい方でして、そりゃあ可愛がられるよなってサイズ感ではあるんですけど、足はいっちょ前にもう20㎝くらいあって、うかうかしてると先に足だけは越されちゃうんじゃないかってびくびくしています。あと2㎝くらいなので、うかうかしてなくても越されますが。


 そんなとにかく『可愛い』が服を着て歩いている状態の息子なんですけども、旦那がある朝、ぼそりと言うわけですよ。


 息子が男に目覚めた、と。


 もうね、ドッキドキですよこっちは。

 まぁこの年齢ですからね? 男に目覚めたっつったって、そっちの――その同性愛的な方の『男に目覚めた』ってのではないだろうなとは思ったんですけど、いや、なんていうか、多少のエロ方面と言いますかね? そういうのに目覚めたのかなって思ったわけですよ。


 ちなみにいまのところ、私も旦那も、息子が男の子を好きになっても、娘が女の子を好きになってもどうぞご自由にという考えでいます。絶対に異性じゃなきゃ駄目とかそういう時代でもないですし、絶対に孫を抱きたいというわけでもないですし。血を絶やすな、みたいなのもないですしね。それにほら、いくら異性が好きでもですよ、結婚出来るか、子を持てるか、ってのはまた別の話ですから。もう誰を好きになっても良いから(さすがに兄妹間はまずいけど)、幸せに生きてくれ、って感じです。それはおいといて。


 そう、そんなわけでですよ。

 もしかしたら、好きな子がいるとか、スカート捲りに興味が出てきたとか(絶対やめろ)、そういうやつなのかな、ってもうドキドキしたわけですよ。それを報告してきたのが男親ってのがまた生々しいじゃないですか。


宇部「男に目覚めたって、どういうこと? もしかして好きな子でも出来た……?」


 ハラハラしながら尋ねますと、旦那はキッチンの陰でこっそり私に打ち明けるわけですよ。もうね、そんなこそこそ話す感じとかもね、ああもう絶対これ恋バナ関連だろ? あいついっちょ前にそういうのあんのかよ、くぅー! ってね、脳内でサンバカーニバルですよ。


 そしたら。



旦那「息子、ディアゴスティーニのマジンガーZを作るやつ、欲しがってる」


 ……はぁ?


旦那「マジンガーZだよ。マジンガーZ。とうとうマジンガーに興味を持ったんだって。やっぱり男だ!」


 いやまずディアゴスティーニは絶対許可しませんけども。


 そんなことより。

 え、何、目覚めたって、マジンガーに? マジンガーに目覚めたら男なの?!


旦那「ここへ来て、やっと俺の遺伝子が顔を出した! マジンガーに惹かれるのは男だ!」


 喜んでるわけですよ。

 何せ息子は顔は私に激似(厳密には私にそっくりな弟の幼少時にそっくり)ですし、お絵描き工作が得意なのも私ですし、運動がからっきしなのも、音痴なのも、色白なのも、昭和の特撮が好きなのも私の遺伝子ですから。まぁ、色白と昭和特撮が好きなのは私だけじゃなくて旦那もですけど。


 いや、ちょっと待て、と。

 

宇部「それは聞き捨てならん。そんなマジンガーが男だけの物だと思うなよ」

旦那「な、何?!」

宇部「私だってマジンガーが大好きに決まってるだろ! だから残念ながらその辺の遺伝子も私だ!」

旦那「ちくしょー!」


 って平日の朝に盛り上がった、っていうだけの話でした。

 とりあえず、ディアゴスティーニはまだ早い、という結論に至りました。自分で稼ぐようになってから自分で買え。

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