令和3年3月
第741話 息子の評価項目
さて先日は息子の参観日でした。
謎に満ちた学校での様子を探るべく、いそいそと(徒歩で)向かいますと、彼は教室でお絵描きをしておりました。こいつまーた描いてんのかよ、と思ったわけなんですけど、息子の正面には担任のK先生がしゃがんでいて、彼が描いているのをじっと見つめているものですから、一瞬、
「反省文でも書かされてるのか!?」
と焦りましたけども、全然普通にお絵描きでした。
K先生の熱視線を受けながら一心不乱に何を描いているんだと覗きに行きますと――、
児童書の挿し絵の模写でした。
彼はお手本を見ながら描くのが大好きなのです。
それがまたよく描けてて。親の欲目ではあるんですけどね、こいつ天才かよって。そんなことを思いながらね。
そんでその児童書がですね、まぁタイトルも見てませんし、そのページしか読んでないんですけど、なんかバミューダトライアングルの話なんですよ。何かそれ系の話のオムニバスっぽいんですよ。そんで何か息子のクラスの一部でバミューダトライアングルが流行ってるっぽいんですよ。
いや、誰もが一度は通りますよね、バミューダトライアングル。もちろん私も通りましたとも。その海域とか上空を通過した船や飛行機が消えるとかね、そういうやつですよ。もうドキドキしながらそういう本を読んでましたから。
やっと息子もバミューダ期に入ったかぁ、なんてね、そんなことをしみじみ思ったりして。
そんで、参観日が終わってですね、まぁひたすら張り切りまくる息子が可愛かったんですけども、その後の懇談会でですね、この一年で成長したと思うところはありますか、みたいなのを発表することになりまして。
ね、皆さんご存知の通りスーパーコミュ障の私ですからね、もうこの時間がひたすら地獄。腹を括れば案外人前で話すのは嫌いじゃないんですけど、講師側で一方的に話すのはOKなんですが、ディスカッション的要素が加わってくるともうダメ。背中に嫌な汗をかきつつ、えーと、息子君はこんなところが成長した気がします、なんてもそもそと発表したわけなんですけど。
ただ、ぶっちゃけ8歳ともなるとですよ。
これといってものすごく成長したな、って感じがわからなくて。
だってねぇ、首が据わったとか、立って歩いたとか、おしゃべりしたとか、おむつが取れたとか、そんな劇的な成長ってないじゃないですか。日々成長してはいるんですけど、それはわかるんですけど、なんて言うんでしょうね、8歳なんだからそれくらいは自然に身につくやつじゃない? みたいな感じと言いますか、『成長!』って感じがあんまりしなくて。
それで逆にK先生に尋ねるわけですよ。
「あの、あと全然思いつかないんですけど、何かあります?」って。
母親の癖に聞いちゃったよ!
ってね、思いましたけど。
良く言うじゃないですか。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥って。だからちょっとヒントでももらえれば、なぁんだそういうのも成長にカウントして良いのね? 一人で粉薬飲めるようになったとか、それも成長にカウントして良いのね? みたいな。そういうのがわかるかな、って。
そしたらですね、さすがはK先生なんですよ。
出るわ出るわ息子の成長。
「息子君はですね、○○の時に○○が出来るようになりましたし、お友達が○○の時には○○ってしてくれますし、最近では○○を○○出来るようになりましたし、可愛いですし、あとはやっぱりお絵描きがものすごく上手で――」
ほええ、さすがはK先生、息子のことめっちゃ見てくれてるじゃん。そりゃああんな連絡帳(※第733話)にもなりますわ、なんてね、ほんといつもありがとうございます、って聞いてたんですけど、あれ、って思うわけですよね。
いまなんかおかしいの挟まってなかった? って。
息子の評価項目の中に『可愛い』って入ってなかった? って。
いやわかる。
ウチの子は確かに可愛い。
ただそれは親の欲目であって、評価項目に入れるものではないはず。もしかして幻聴? 我が子可愛さにとうとう幻聴まで聞こえちゃった? いかん、気になりすぎて他のお子さんの成長の話が全然頭に入ってこない。
その後、玄関まで見送ってくださったK先生と息子の授業態度のことなんかを聞いたりしたんですけど、そこでも可愛い可愛い言ってましたわ。幻聴じゃなかった。あいつ完全にゆるキャラポジションになってんな。
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