第725話 ない言葉

 自分の中にない言葉ってありませんか?

 それこそ、ほら、ナポレオンの『不可能』みたいな。いやそこまで恰好良いやつじゃないんですけど、普段使わない言葉っていうか。


 だけど、話の流れというか、相手に伝えるためにあえてそれを選ぶ時ってありますよね。

 

 また安定のふんわりした導入で始まりました宇部ッセイです。


 そろそろバレンタインですね。その昔、私のハンサムダディはバレンタインになると会社の女性社員(パートのおばちゃんとか)からチョコをたくさんもらって帰って来てくれたものです。ウチのパパン、お酒が全く飲めないんですけど、ウィスキーボンボンとかももらってたりして、それは結局誰が食べたんだったかな。

 私は基本的に中にドロッとしたものが入ってる系のチョコ(お酒じゃなくても)が苦手ですね。お口が緩い人間なので、液体が入ってるやつって高確率で口から飛び出ちゃうんですよ。


 ってそんな話がしたいわけじゃないんですって。今年のバレンタインは市内のイオン(徒歩だと40分くらいかかる)に行こうかなって思ってたんですが、その周辺でちょっとコ□ナさんが悪さをしてまして、ちょいと距離を置いてる状態なのです。近くのスーパーだと旦那もラインナップわかってるだろうし、サプライズ感が薄れるんだよなぁ、と迷うところです。あぁまた脱線しちゃった、テヘペロ☆


 そう、言葉の話なんですよ。

 先日息子がですね、どうやら校内が寒かったらしくて、上に体育着を重ねて帰ってきたんですよ。さすがはファッションリーダー、どこからどう見てもくそダサいのに恰好良く見えちゃう。母の目は濁っています。


 でも寒いって言われても困っちゃうんですよ。長袖のインナー(ヒートテック的なやつ)に裏起毛のスウェット着てるんですから。これ保育園だったら、暑すぎるのでもう少し薄くしてください、って注意されるやつ。ただ、いまはコ□ナ対策で換気しまくってるらしく、例年より寒いそうで。


宇部「厚着させてくださいって連絡帳に書いてたね」

旦那「あぁ見た見た」

宇部「でもさ、困るよね。ほら、息子君のワードローブにカーディガンとかないじゃん?」

旦那「だよねぇ」


 結局、中に薄手のシャツをもう一枚着せて送り出したわけなんですが、そう、ここですよ。


 ワードローブ


 私、こんな言葉使わない。その言葉自体は知ってるけれど、使わないわけです。何か、わかります? この都会的な響き。良い女が使ってそうな言葉だなと、良い女じゃない私なんかは思うわけです。


 イメージはですね、物が極端に少ない感じのただっ広い寝室ですよ。フローリングでね、ベッドもダブルとかなのかな? そんな感じで、カバーは全部白とかで。そんで、だぼっとした彼シャツみたいなのを着た、ちょっと気だるげな美人さんがですね、髪をかき上げつつクローゼットをシャッと開けて、今日は何を着ようかしら、みたいな。ワードローブってやつはそういうのに似合う言葉なんですよ。私は『ワードローブ』にどんな夢を見ているんだ。


 全体的に宇部さんどうしたって話なんですけど、もうとにかくそんなイメージでして、そんな都会的な良い女が使う言葉が私の口から飛び出しちゃったもんですから、おいおいこりゃあもうスムージーとか飲むしかねぇんじゃん? なんて思ったりしながら味噌汁啜りましたわ。

 

 で、ふと思い出したのが、家を出て都会(札幌)で働き始めた私の姉が、トイレのことを何か得意気に『パウダールーム』って言ってた(たぶんわざと)ってやつですね。


 ひとつ屋根の下で同じ釜の飯を食ってた姉がまさかトイレをそんなオッシャレーに表現するなんて思わなくて、


「姉ちゃん恰好良いー! 札幌で働くとこうなるのかー!」


 って大興奮だったな、って。


 やれやれ、私は昔から変わらんな。

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