第718話 自分の土俵で戦いたい

 ちょっと前の話題になりますけど、鼻出しマスクがどうこうってやつ、あったじゃないですか。センター試験の受験者がマスクから鼻を出していて、それを注意されて――っていう。


 私、恥ずかしながら最近全然ニュースというニュースを見ていないというか、テレビがもう完全に子ども達に取られているもので、Yah〇o!のアプリでちょろっと見る程度なんですよね。なのでその『鼻出しマスク』っていうのも、何ならそういう流行っていうんですかね、ほら、手作りマスクにも色々流行があるじゃないですか、立体マスクだの大臣マスク(どこかの大臣が愛用していたタイプのマスク)だのって。へぇー、鼻を出しても良いマスクが出来たのかぁ、これは眼鏡人には朗報だな、なんてのんきに考えてたんですけど、そんなことではなかったですね。


 まぁそれは良いんです。今日話したかったのはその受験生がどうこうとか、どっちに非があるとかそんなやつではないんですよ。


 その事件(?)からしばらくして、やっぱりYaho〇!アプリでニュースを見ていた私はこんな記事を発見したんですね。


『誰も言わないならと女性肛門科医が解説 「鼻出しマスク」の問題点とは』


 こんなのもう絶対クリックするでしょ。

 だって女性肛門科医ですよ? お尻のスペシャリストが鼻出しマスクについて語ってくれるんですよ? もう興味津々ですよこっちは。この手のアプリだと、ニュース記事と見せかけて下の方にちっちゃく『PR』とか書いてたりして実は何かしらのサプリとかそういうやつの宣伝だったりするんですけど、肛門関連の何かを勧められるようなものではありませんでした。一安心。


 鼻と肛門なんて気持ちの上では一万マイルくらい離れてますけど、やはりお医者さんであるからには、いくら専門はお尻でもマスクについて一家言持ってるんだな、なんて思ってですね。その肛門科女医さんのお話を読んでみよう、とクリックしたわけです。


 そしたらまぁ、マスクそのものについても医師の間では意見が分かれるものらしいです。

 それで、彼女の意見としては、布製マスクは重層で目が詰まっていて、顔にフィットするものが良く、ウレタンマスク、フェースシールド単独(マスク+フェースシールドは効果あり)、マウスシールドでは、飛沫を抑える効果も、吸い込みを抑える効果も低いので避けた方が無難とのことでした。ふんふん成程ね、と読み進めたわけなんですけど、ふと思うのは。


 これ、別に肛門関係ねぇな、っていう。


 と油断していたらですよ。

 次のページで彼女は本領を発揮してきたのです。


 どんなにマスクをしていても感じてしまう臭いってありますよね、と。


 おっと、臭いについて言及してきたぞ、と。もうワクワクが止まりません。マスクの話から、マスクをしても嗅ぎ取ってしまう臭いの話へ! さすがはお医者様、自分の専門分野への誘導が強引! やはり自分の土俵で戦いたいわけです。


 もうここからは彼女の独壇場ですよ。

 前のページでは確かにマスクの――それもコ□ナに絡めた話をしていたというのに、ここでのマスクはウィルスがどうとかではなく、ただ単に臭いを防ぐためのもの的な扱いにすり替えられた上で、さらには一切触れられないという。


 気付けば爽やかな朝の時間にはちょっと書けないような(手遅れ)Bの話にまで発展し、


『 最近、医学書にもない肛門トラブルが増加しています。日本人の「オシリ」、大ピンチに見舞われています。この機会に情報を収集してみてはいかがでしょうか。(原文ママ)』


 で締めるという。

 いや、鼻出しマスクの話、どこ行った?!

 鼻出しちゃったらその臭いも嗅ぎ放題ですけど?!

 

 もう誰もが首を傾げますよ。さすがの私も傾げましたよ。


 ただね、思うんです。

 

 このエッセイもそうだよな、って。


 成る程、私のエッセイを読んだ人って、いっつもこう思ってるんだろうな、って。皆さん、ほんといつもありがとうございます。

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