第716話 おとーさん

 小学校入学のタイミングで『パパママ』呼びから『お父さんお母さん』呼びに変えようかと思ったものの、我々自身が「ママがね」「パパはね」などなどと呼んでしまうため、何となく挫折した宇部家です。


 それでも気まぐれに「おとーさん」「おかーさん」なんて呼んでくれるため、ま、そのうちそのうち~、と呑気に構えております。

 ちなみにトイレトレーニングもこんな感じでそのうちそのうち言ってたら、本当にそのうちにするっとオムツが取れたという実績があるため、宇部家は割と「そのうちそのうち」で済ませる傾向にあります。良いのかそんなんで。


 さて、ある休日の朝のことです。

 ご飯も食べ、お着替えも済ませた子ども達がキャッキャと仲良く遊んでおりました。


妹「にいに、えいがごっこしよう!」

兄「いいよー」


 『えいがごっこ』、気になるワードです。私の頭の中は「よっしゃ1話分もらった!」という気持ちでいっぱいです。しめしめ。


 どんな映画が展開されるのかと身支度(私だけ仕事)を済ませながらワクワクしていると、どうやら単なる人形遊びのようで、ストーリーとしてはベタな怪獣VSヒーローもののよう。

 ただ、宇部家のおもちゃ事情として、怪獣とヒーローがセットになっていないものが多いといいますか、悪役はかなり充実しているものの、ヒーローがあまりおりません。ウルトラマンの怪獣にライダーが立ち向かう、なんてこともよくあります。夢の競演。


 で、お化粧しつつ耳を傾けておりますと、何やらそのヒーロー側にピンチが訪れたようでした。テレビならここで謎の力やニューアイテムによってパワーアップするか、味方が駆けつけるか、あるいは来週に持ち越してパワーアップor援軍の展開になるかです。結局パワーアップか援軍。


 どうやら今回は援軍パターンらしく、妹に小声で「妹ちゃん、そこの○○とって」と指示を出しております。正直その『○○』という単語も「??」だったのですが。


 さぁ、やってきました、援軍です。○○とは一体何か!?


兄「出動っ! おとーさん!!」


 お父さんなのでした。

 お父さんに見立てたウルトラマンパワードのフィギュア(ウチで一番大きい30㎝くらいあるやつ)が颯爽と現れたのです。そうね、でかいのはお父さんよね。

 そう、さっき息子は「妹ちゃん、そこのおとーさん取って」と言っていたのです。それで伝わるんだ!? と正直思いましたが、さすがは兄妹、伝わっていた模様。


 やはり子ども達にとってお父さんは永遠のヒーロー、最強の助っ人のようです。何これちょっと、朝からエエ話やないの、と涙腺が緩みかけましたが、まぁ確かに昭和のウルトラマンといえば助っ人って兄貴か親父だったもんな、と。


 ただ、父子バディのヒーローものを書きかけのまま放置しているママとしましては、とっとと続き書けよ何年放置してんだと朝っぱらから別の涙が出そうでした。

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