第704話 少女漫画のじゃないの?

 毎週決まった曜日の朝食がパンの宇部家です。木曜日と日曜日がパンの日。それ以外はお米を食べます。いまのところ、シリアルの日はありません。思春期になったら娘辺りが言い出すのかな、シリアル食べたいとか。体重を気にしたりして。わかるわかる。私も通った道。ただあれ、めちゃくちゃお腹空いちゃってお昼まで持たないのよね。その(授業中に腹の音が鳴る)覚悟があるなら食べるが良い。


 ――じゃなくて。


 そう、パンの日の話なんですよ。

 ぶっちゃけパンの日というのは別名『ママの手抜きの日』でして、お味噌汁も作らなくて良いし(インスタントのスープ)、おかずというおかずもないです。もうひたすらトーストをもしゃもしゃと食む。


 で、子ども達が好きなのが、普通のチョコとホワイトチョコのクリームがパックになってるやつですね。もう説明が難しいので形状は省きますけど、とにかくその2つのクリームのやつが好きでして、我が家ではそのまま『白と黒のやつ』と呼んでいます。家族そろって語彙力がどうしようもない。

 そんで、2枚目はしょっぱい系のやつでお口の中をリセットして――なんて感じで朝食が終わり、お洗濯を干していた時のこと。


 旦那の口の端にそのチョコクリームが付いていたわけですね。


宇部「口の端にチョコついてるよ。ほら、ここここ(自分の口の該当する部分を指す)」

旦那「おあ、マジで? どこ? ここ?」


 いっそ拭ってやれよ、って話なんですけど。ほら、良い大人を甘やかすのはねぇ。これが子ども達なら迷わずウェットティッシュですわ。


宇部「いやー、ごめんね。あれでしょ、本来ならこの場合、「んもう、チョコついてる★」みたいな感じで私が舐めとるべきなんでしょ。さすがにそれは出来ない」


 最近の私はもうネタに貪欲ですから、旦那とのこんなやりとりも1話分になるとわかっている以上、膨らませるっきゃないわけです。たぶん少女漫画ならこういう展開ですよね。すると旦那はですね、めちゃくちゃ驚くわけですよ。


旦那「絶対違うよ。舐めないって」

宇部「嘘だ。少女漫画なら舐めるって。ほっぺのご飯粒とか「お弁当付いてるよ」って食べるじゃん。俺様系だったらそのノリで舐めにいくでしょ」

旦那「それはご飯粒だからだよ。いくら俺様でも舐めないって。舐めるのは少女漫画じゃなくてエロい漫画だよ」


 これはヤバいですよ。

 てっきり少女漫画の王道的展開だと思っていたのに、何を間違ったかエロい漫画の話だったんですよ。えっ、ウチの嫁、そんなエロい漫画読んでんの!? って思われてしまったわけですよ。読んでねぇよ。あれ、それとも、飼い犬が顔を舐める話と混ざったのかな? いや、犬にチョコはアウトだから!


旦那「まぁ、でもさ、そういう展開になったとしても、あとちょっとで! ってところで邪魔が入るんだよね。友達がさ、呼ぶわけよ「おーい、みのり~!」とかって」

宇部「みのり!」

旦那「少女漫画のヒロインの名前、『みのり』のイメージあるんだよね」

宇部「マジか。私そんなイメージとかないわ。まぁ良いけど。それでその後は?」


 まぁ、良いところで邪魔が入るのは少女漫画のお約束ですからね。それについては異論ないです。


 ただ、ここで分かれたんですよね、意見が。


旦那「そこで我に返るわけよ。「はっ、あたしったら! こいつに流されるところだったわ! 危ない危ない!(赤面)」って」

宇部「えっ、「あっ、ともみー。何~?(大きく手を振る)」じゃないんだ!」


 私の方はあれですね。鈍感系ヒロインですね。俺様君からのこれまでのアプローチとか確実に一切効いてないですよ。旦那の方はどうでしょう、これが正統派なんでしょうか。これをきっかけにその俺様君のことを意識しちゃう感じですかね。


 何かあれですね、旦那の方のヒロインちゃんのが少女漫画感がある気がします。あの絵がきれいな感じの少女漫画と言いますか。私の方はコメディですね。ちょっと絵が丸っこい感じの。


 そこから旦那が通った少女漫画の話になり、彼はどうやら『天使なんかじゃない』を愛読していたようでした。マジか。私も読んだわ。同じものを読んできたのに。

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