第672話 掘り出し物を掘り出してくる

 掘り出し物、って良い響きだと思いません?

 こんなところにこんなものが!? っていう驚きとか、それを自分だけが見つけたのだ、みたいな優越感というか。まぁ、他の人にしてみれば大して魅力のないものだった、っていう場合もあるわけですけど、でもたまに「えー! それ、そんなところに売ってたのー!?」みたいなこともあったりして、「ふふーん、まぁね~」なんて得意気に返したりして。


 それがよくあるのが、地元の小さなCDショップでした。

 私が学生の頃というのは、まだまだCDが良く売れてた時代と言いますか、握手券とかをつけなくてもミリオン突破、みたいなのが結構ありましたね。いまではおまけでもつけないとかなり厳しくなったんじゃないかと思われます。


 その頃の私がハマっていたのは、まぁいわゆるヴィジュアル系というやつでして、有名どころですとマリスミゼル(Gackt様が所属していたロックバンド)ですとか、ラクリマクリスティ辺りでした(余談ですけど、このPC、『ガクト』って入力して『Gackt』と変換されないんですけど、どういうことなのかしら)。それもデビューと同時にハマったわけではないので、ハマってから発売されたCDなんかはすべて初回限定を押さえられたわけですけど、それ以前のものとなると通常版だったり、そもそも売ってなかったりするわけですね。ああ田舎が憎い。


 ですが、その小さなCDショップはですね、普通に初回限定版が置いてあったんですよ。大きめのスーパー(旦那に言わせると4階建てなので百貨店)の中に入っているCDコーナーにはないのに、その小さなCDショップにはあるんですよ。もうバイト代を全部突っ込むくらいの勢いで買いまくりましたね。それほど地元では人気がなかっただけなのかもしれませんけど、それでも全国的に有名な人達ですから、もうほくほくですよ。私だけの穴場だわ、なんて思ったりして。


 さて、この『掘り出し物』なんですけどウチの息子も掘り当てるのが大好きなようでして、近所のホームセンターにですね、どういうルートで集められたのか不明なDVDがどっさり詰められたワゴンがあるんですけど(ドラマの2巻だけとかあったりする)、そこに行くと必ずその中をチェックするんですよ。まぁひとつ500円もしないので、たまに買ったりします。


 そんなある日のこと、急に雪がドカンと降ったものですから、子ども達の防寒着をパワーアップ(スキーウェア&耳当て付き帽子)させねばと慌てて引っ張り出したらですね、どうしても息子の雪用の手袋がないわけです。サイズアウトしたんだったかな? と思って、とりあえず旦那に息子のお迎えついでに買ってきて、とお願いしたわけです。


 で、無事に目当てのものを買ってきた旦那と息子が帰宅したわけですが、ニコニコ顔の息子の手にあったのは、雪用手袋ではなく――、


『ネギマン』


 というDVD。


 ネ ギ マ ン ?

 

 もうクエスチョンマークしかありませんでした。

 は? ネギマンって何? ていうか、これどこで買ってきたの? え? いつものホームセンター? こんなの売ってたの?!


 そんで、ネギというからには、そういうヒーローなんだろうな、って思うじゃないですか。しかし、どうやら彼はネギの化身ポジションらしくてですね、戦うのは松江城(マツエ・ジョー)という付喪神のようで……。


 まぁ私としては、正直何だこれ、と思うものではあるんですけど、息子はですね『○○マン』にとにかく目がないものですから、掘り出してきちゃったわけです。


 そんで、しばらくの間、ネギマンのPVばっかり見ていました。彼は気に入ったようです。

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