第643話 なかなかなくならない、という感動

 夏休みに入る前のお話でですね、息子が『ひらめきノージー』というEテレの工作番組で紹介されていたガイコツさんを作りたがってる、みたいなのを書いたと思うんですね。トイレットペーパーの芯を12個くらい使うやつ。


 そんなトイレットペーパーの芯なんて、「くれ!」って言われて「よっしゃ、どうぞ!」とはなりませんからね? それでもまだ1本ならば、仕方なくがががががーっと出して芯をとり、『こちらのペーパーはスタッフが責任をもって使い切りました』みたいなことが出来なくないのですが、いや、12本って。


 とりあえず、ガイコツさんのことは忘れてくれたみたいなのでそこは良いんですけども、小学校ってあれですね、ちょいちょいそういうものを要求してきますね。


 お菓子の空き箱、トイレットペーパーに限らずとも何らかの芯、食品トレー(生肉とか生魚のやつ)等々、「●●日にこういう工作を作るので、お願いしまーす」みたいな感じでお便りに書いて来るんですよ。そりゃあもうウチの息子といえば、お絵描き大好き工作大好きで知られておりますからね、こっちの熱も入るってなものです。


 なので、ラップの芯、お菓子の空き箱、牛乳パック。この辺りは常に取っといてます。昔々子ども達がバブバブの頃に買ったはいいけれど、結局そんなに使わなかった使い捨てストローなんかもいつかお呼びがかかるかもしれない、と取っといてます。前回は捨てそびれた古電池がまさかのご指名で、第二の人生、楽しんで来いよ! と送り出したりもして。


 それでですね、そう、トイレットペーパーの芯の話をしたかったんですよ。ここまでさんざん書きましたけど。


 いや、ウチのトイレットペーパーって、シングルなんですよ。ダブルはね、あれはブルジョワジーが使うやつだから。というわけで、シングルペーパーで拭き拭きしていたわけなんですが、こないだ、娘の運動会で、親子競技の参加賞がトイレットペーパーだったんですよ。1袋ね。1ロールとかじゃなくて。親と一緒にゴールしたら、たくさん並べられているペーパー達の中から園児が一つ選ぶんですよ。もうね、応援席からの、


「●●ちゃん、そっちのじゃなくて! そう、そのピンクのやつよー!」


 みたいな声がすごいわけです。

 私もね、出来ることなら叫びたかった。


「娘ちゃーん! ウチのペーパーはシングルよー!」って。


 でも、出来なかったんですよ。

 恥ずかしいから? いいえ、違います。私、コミュ障ですけども、そういう時はちゃんと声が出るタイプなの。だって娘に話しかけてるだけですから。ただちょっとボリュームがおかしいのと距離が遠いだけで。


 いや、先生方、気を利かせたのか知りませんけど、並んでるやつ、ぜーんぶダブルだったんですよ。選択肢を与えてくれよ! いや、色んなメーカーのはあったけども、そうじゃなくて! 色付きとか香り付きとかその辺はどうでも良い! 二枚重ねか否か、って部分を選ばせてくれ!


 というわけで、もちろん「あー、ウチ絶対シングルじゃないとダメなので、いいですー」とはならないものですから、ダブルのペーパーをしばらく使っていたわけですね。

 

 えっ、何これ。

 あっという間になくなるじゃん?

 あんなに欲しかった芯がすーぐ手に入るじゃん?!

 ちくしょー、ダブルにすれば芯12個だって夢じゃないかもしれなかったのか!


 とはいえ。

 息子のガイコツさん熱が冷めた以上、もう芯はそこまでいらないわけです。

 そんじゃダブルを使い切ったらまたシングルのやつ買ーおう、っと。


 しかしですよ、最近のペーパーって、なんて言うか、第3の勢力みたいなの出て来てません? 第3の勢力っていうか、『2倍巻き』っていうやつ。大きさがあんまり変わらないところを見ると、従来の品より薄い感じになってるんでしょうね。あんまり薄いと本当に大丈夫? って心配になりますけど、一枚で使うわけじゃないですしね。


 というわけで、宇部家でもその2倍巻きを導入したわけです。これならたくさん買い置きしなくて良いじゃん! と。


 うはぁ、全然なくならん! 何この安心感! 

 ダブルを使った後だから余計に感動しますわ。なくならない! いつかはなくなるけど、すぐにはなくならない! 何を言ってるんだ私は!


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