第630話 20倍希釈のカルピスエッセイ
今日はですね、まぁもちろんネタがカツカツっていうのもあるんですけど、せっかくなので、私がこのエッセイの1話をどのようにして書いているのかというのをレクチャー(?)出来ればな、なんて思うわけですね。偉そうに。
これさえマスターすれば、あなたもこの20倍希釈レベルのカルピスみたいなエッセイが書けます! っていう。マスターしたところで今後一切役に立たないテクニックです。偉そうに、お前。
まず、今回のテーマというか、ネタをここでもう書いちゃいます。
『娘の理想のおうちについて』
これだけです。
ちなみにこれは家族でドライブ中に、「よっしゃこれ書けそうだな」みたいなネタが娘から提供されたものですから、忘れないうちにメモした感じのやつです。もうメモしたそのまんま。たったの一行。ここからこれをどう膨らませて1200~1800字(宇部ッセイの1話分)まで持っていくのか。これが大事。
というわけで、今回はこんな感じのざっくりとしたテーマからエッセイを1本書く時の流れをご紹介したいと思います。
とはいえ、会話をそのまま書いてはいけません。これではカルピスを原液で飲むようなもの。一瞬でなくなる上に濃すぎます。いや、カルピスの原液を一瞬で飲める人間っている? そう、こういうフレーズが大事です。書いている途中で思いついたことはどんどん書いていきます。もうチャット感覚で吐き出していきましょう。前後の文章が全く繋がっていなくても構いません。構わねぇのかい。こういうセルフ突っ込みも大事です。自分の中にもう一人突っ込み役を飼っておきましょう。普段から飼いならしておくと、いざという時に抜群の切れ味で突っ込んでくれて便利です。
順調に600字ほど消費しました。まずまずです。このように無意味に字数をチラつかせ、「へー、こんな文章でも600字とかいくもんなんだー」と読者様に知らせるのも手です。これだけでも数十字稼げますし、自分自身、どれくらい書いたかな? みたいな確認にもなります。
さて、ここまでぐだぐだ書きましたら、そろそろ本題に入っておきましょう。
そう、今回はドライブ中の会話がポイントなわけですから、さらっと状況を書いておくわけです。何せいきなり「いやー、こないだドライブ中に娘がこんなこと言い出しましてー」なんて書いてしまったら、そんなの20倍ではないのです。せいぜい3倍といったところでしょうか。全然美味しいカルピスです。そんなことでは困るのです。何が困るって、1000字に満たないからです。あと、全然宇部カラーが出ていなくて面白くないはずです。日記かよ、って。
さて、存分にぐだついた文章でドライブの目的地やらその日の天候やらを書き記しましたら、やっと上記の『娘の理想のおうちについて』部分を書きます。この頃には恐らく字数の方も1200字くらいまで来ているはずです。ここまでくればもう安心。たぶん15倍くらいには薄まっているはずです。多少酸味が感じられれば御の字の水です。
ですが。
ですが皆さん。
ただの水ではないのです。
薄まっていても、そこには何㎖分かのカルピスが混入されているのです。例え全く味が感じられなくなっても、カルピスはカルピス。いや、カルピスウォーター。ウォーターにカルピスが入ってるんですから、何倍に薄められていようともそれはカルピスウォーターと見て間違いないわけです。
もうそろそろ何を書いているかわからなくなってきましたね? それこそが宇部ッセイの醍醐味です。書いてる人間が一番わけわからないのです。良い調子です。しらふの癖に酔拳みたいなノリで書ききることが重要です。あとはもうノリと勢いで締めましょう。
ご清聴ありがとうございました。
そんな感じで書いたエッセイを明日お送りします。
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