第629話 YEAH
最近娘の方もお絵描き熱がすごいです。
息子の方は自分の描きたいものだけを描くアーティスト型なのですが、娘はというと、こちらにお題を求めてくるタイプでして、指定したものをきちんと描いてくれます。あれですね、積極的に仕事をもらいにいくタイプといったところでしょうか。
もし仮に2人が絵の世界で成功したとしたら、息子はとにかく自分からガンガン新作を発表していく感じで、娘はクライアントの要望通りの絵を描く感じなんだろうな、と。そうなると、何か娘の方が売れっ子になりそうですよね。まぁ、完全にとらたぬ(捕らぬ狸の皮算用)ですけど。
ちなみに、秋田県には一応公立の美大があるんですよ。秋田の大学で有名なのは国際教養大学という、就職率が100%? 99%? とにかくとんでもなく就職率の高い大学があるんですけど、それがまぁ結構な田舎にありましてですね、そりゃあここに通うとなったらもう勉強するっきゃねぇな、みたいな感じなんですけども、親としてはそういうところに入ってくれたらもう言うことなしですわ。
って、それは置いといて。
そう、美大の話。
その美大のCMが流れた時に、旦那が息子に「息子よ、この学校に入ったら、毎日たくさんお絵描きしたり、工作したり出来るんだよ」とたぶんあながち間違いでもなさそうなことを吹き込んだらしいのですが、そしたら息子は即答ですよ。
「僕、この学校に行きたーい」
でしょうね。
おうおうよっしゃ、入れるもんなら入ってみやがれ。ママは最近『ブルー・ピリオド』って漫画(芸大に現役合格する話)読んだりしてるから、全然ウェルカムなんだぜ。さすがに東京の芸大とまでは言わん。秋田のだったら、ほら、近くだし、ママとしても安心。そんでゆくゆくはラーメンズの片桐仁さん(多摩美大卒)みたいになってEテレに出てくれ。
と恐らく子を持つ親なら一度はこれくらいの妄想をしたと思うんですけど、それはそうとして今日は娘の話がしたかったのです。
兄とは違って受注生産型の娘ちゃん、仕事も早く、クオリティも高いとクライアント(私と旦那)からの評判も上々です。ママのリクエストである『シロクマ』や『フクロウ』、『リス』も「あー、うん、わかるわかるー! もうめっちゃシロクマ(フクロウ/リス)ー!!」ですし、パパのリクエストである『チーター』や『ライオン』も「すごいすごい。チーター(ライオン)に見える! むしろそれ以外に見えない!」と描く度に褒められるものですから、もう得意気です。なので、描き上がると、それはそれは嬉しそうに持ってくるわけですね。かいたよー! って。
それでですね、娘ちゃんは絶対に「はい、どうぞ」って見せてはくれないんですね。
最近はまず裏返しの状態で持ってきて、そこでカウントダウンするようになったわけです。
「ママー、いまから見せてあげるねっ。いくよー! すりー、つー、わぁーん」
ちゃんと指も三本立てるところから始まります。
「あっ、まちがえた! ごぉー、よぉーん、さぁーん……」
一体何を間違えたのかわかりませんが、とりあえず、3からではなく5からのカウントダウンになりました。小さなおててを目いっぱい開きまして、親指から折っていきます。親指、人差し指と折っていきますと、そこからはなぜか人差し指、中指、薬指の三本を立てました。さっき3からカウントダウンした時と同じ指です。だったらさっきので良かったんじゃないかと思うのですが、ぐっと我慢です。何か重要な意味があるかもしれないからです。たぶんないです。
余談ですが、息子はなぜか小指だけを曲げることが出来るタイプです。薬指がつられて動かないんですよ。よくギター弾く人は出来るとか言いますよね。あとピアノ弾ける人とか。私、ピアノは弾けるんですけど、それは出来ません。旦那はピアノもギターも弾けないはずなのに出来ます。というわけで、それは旦那の遺伝のようです。余談終わり。
というわけで、娘ちゃんのカウントダウンなのです。
「にぃーい、いぃーち……」
さぁ、もう折る指はありません。全部折り切って小さな握りこぶしが出来上がりました。やっとここから我々の依頼した絵を見ることが出来るのです。
が。
「
やけにそれっぽい発音で、軽く握ったこぶしをそのまま目に当て望遠鏡スタイル。突然何?! 普通『3、2、1』と来たら、次はせいぜい『0』ですよ。もしかして娘、『
もう絵を褒めるどころじゃなかったですわ。「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます