第627話 髪の毛おじさん
先日はJK時代に出会った変なお客さんの話を書きましたけれども、今回はおばちゃんになってから出会った変なお客さんのお話を書こうと思いまして。
だいたいこうやって何年も接客業に従事しておりますと、変わったお客さんの一人や二人は遭遇するわけです。仕事終わりに事務所に行くとですね、「今日はこんな変わったお客さんが~」なんて話に花が咲いたりするわけですよ。そしたらもう「いやいや、こっちの方がもっとすごいんだから」みたいなね、そんな話になるわけですね。
お人形をベビーカーに乗せてご来店するお客さんや、御神鏡を携帯電話のようにして誰か(たぶん神様)と通話してらっしゃるお客さん、ネグリジェ(推定)をワンピースとしてお召しになっていて色々お透けになっていらっしゃるお客さんなどなど。
おそらくこの辺りは程度の差こそあれ、全国どこにでもいらっしゃるのかな、と思いますが、自分が実際に接客するとなると、やはりかなり身構えてしまいます。
さて、私が数年前、まだアラフォーというよりはぎりアラサー(この場合の『アラサー』は30歳を中心にしてアラウンドする感じなので34歳までOK、という宇部に都合の良い『アラサー』をさします)の時のこと。
売り場で前出しをしていると、恐らく50代くらいの男性のお客さまにですね、その辺の商品に関連した質問をされたんですね。これって○○ですかね、みたいな。なので、自分がわかる範囲で説明しておりますと、何か全然話が終わらないといいますか、どんどん色んな話に派生していくんですね。そんで途中からなぜか、
「アナタ、髪きれいね」
って、私の髪に言及し始めたわけです。
フリーズしますよね。
えっ、私の髪が何だって?
見ず知らずの人間の髪に言及して良いのはカットモデルを探している美容師さんくらいなもんじゃない? とか色々考えましたよ。
「アタシね、黒髪が好きなの」
この辺からしゃべり方が完全にオネエのそれに変わったわけです。
ちなみにウチの職場はある程度の茶髪までOKなのですが、私は本当に茶髪が全然似合わないので、白髪を地毛と同じ真っ黒に染めております。
そんで、「はぁ」とか「まぁ」とか適当な相槌を打っておりますと、そのお客さん、なんと私の髪の毛に手を――……
オイこら貴様。
誰が私の髪に触れて良いと言ったこの野郎。
良いか、私はな、美容師ですらも男性はNGにしているくらい、異性に触れられたくないんだ。ていうか、同性だとしてもむやみやたらに触れられたくないんだ!
とりあえずどうにか理由をつけてその場から逃げ、事務所に駆け込み、中にいた店長に相談しまして、しばらく籠らせてもらいました。
その後も定期的にやって来るため、そのお客さんが確認されるとインカム(売り場作業員は全員付けてる)で「髪の毛おじさんご来店、宇部さんは事務所に避難してください」みたいなお知らせが流れてくるようになりましたね。
最近はとんと見なくなったので、恐らく別のターゲットを見つけたのでしょう。
いやもうほんと、このままずっと来なくても、ええ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます