第575話 その小さな身体に

 この年になって初めて体験したことに、『うずらの玉子』があります。


 いや、食べたことはね、ありますよもちろん。中華丼とかね。中華丼に入ってるやつね。あとあれ、うずらベーコン串ね。大好きです。


 だけど、うずらの玉子を生の状態で買って調理するっていうのをしたことがなかったんですね。


 そもそもこいつ、何分間茹でたら良いんだ?


 もうここからスタートですわ。何ならうずらの玉子って茹でられた状態のものしか知らないので、もしかしてこれ既に茹で玉子だったりしない? とか考えたりもしました。危うく割るところです。騙されんぞ。


 調べりゃ良いんですけどね、何かちょっと面倒だったので、とりあえず水から茹でる感じならイケるだろう。10分も茹でりゃ完璧だろう、と。

 鶏卵の場合はですね、もうとにかく黄身をとろんとろんの茹で玉子にしたいものですから、羽海野チカさんの『3月のライオン』で知った『沸騰したお湯の中に冷蔵庫から出したての生玉子を8分』というのを忠実に守りすぎるあまり、いざ黄身までカチカチのを作ろうと思っても必ず失敗する感じなんですけど、このうずらだけは失敗出来んのです。


 なぜ失敗出来んかというと。


 その日の夕飯の目玉(メインとかじゃなくて、子ども達が確実にテンション上がるメニュー)がうずらベーコンだったから!


 そして、このうずら(10個入り)が税抜98円とかやすーいって錯覚してたけど、一緒に買った鶏卵(10個入り)も税抜98円で、いや、そう考えたらめちゃくちゃ高級食材じゃねぇかお前! 


 っていうね。


 そんで、鶏卵の方はですね、一週間の中で値段の変動があるんですよ。普段は税抜148円だったりするのが、土曜日には98円、みたいな。もちろん土曜日に買います。サンキューイオン!


 でも、うずらちゃん、いや、うずら様はずーっと98円。お値段据え置きの98円。うずら安くて良いなぁって思ってた私の馬鹿。


 あのサイズで1個約10円だぜ? 10円くらいのサイズで10円なんだぜ? じゃあもうそれ10円なんじゃね? 私が食べてるうずらって実は10円玉だったんじゃね? そんなわけあるかい。

 

 でも、中華丼に入ってるうずら様って、ショートケーキにおけるイチゴみたいなところあるじゃないですか。先に食べるか後に食べるか、みたいな。ないです? あるでしょ?


 私なんかは生クリームが苦手なもので、イチゴのショートケーキがそもそも食べられないものですから、なかなか『そのイチゴいつ食べるか問題』に加わることが出来ないんですけど、中華丼の方はね、全然参加出来ますから。


 ちなみに、チョコレートケーキの場合でも、上に何かしらのおまけみたいな物が乗っかってたりするじゃないですか。薄いチョコをくるくるっと巻いたやつとか。そういったものを便宜上『イチゴ』と表現させていただきますと、私はどうやら、『イチゴに到達した時に食べる派』のようです。


 先に食べるわけでも、避けておいて最後に食べるわけでもない。到達したら食う。特別感0。だったらその議論に加わる必要なかっただろ、っていうね。


 そんな私ですので、中華丼のうずら様もですね、まぁまぁのタイミングで食べます。いや、本当は大事に食べたい気持ちもあるんですよ。でも、あっ、こいつうずら大事に取っといてんだな、みたいな風に思われちゃうのかな、って。何でしょうね、ショートケーキのイチゴは最初に食べても最後に食べてもそのこだわりが何か可愛く思えちゃうんですけど、中華丼のうずらは……違うんですよ。何でしょうね、よくわかんないですけど。


 とにかくあれですよ。

 もううずら様は高級食材って認識になってしまいましたからね、今後は、「ここぞ!」という時にのみ買うようにします。朝めっちゃ怒っちゃった時とか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る