第278話 数字がでかすきる

 いやほら、先日息子の学校行事で科学館に行ったんですよ。


 まずは親子で制作して、その後は各自自由に遊んでOKっていう。


 石鹸水に浸った大きな輪の中に入って、ロープをぐいっと引っ張るとシャボン玉の壁が出来るやつとか、箱を勢いよく叩くと空気砲が出るやつとか、テルミンっていう楽器とか、もうたくさんありすぎて覚えてないんですけど、とにかくそういうのがあるわけです。アスレチックとかは昔から苦手だったんですけど、こういう施設は大好きなんですよね。息子よりも私がはしゃいでしまった感があります。


 だって科学ですよ、科学! 私のようなお馬鹿さんには何一つ理解出来ないやつ! 理解出来ないということは、もうイコール魔法みたいなもんですから。え~何で何で~ってアホ面ではしゃぎまくってました。


 で、お弁当を食べて、もう一回遊んで、最後の最後で先生が皆に聞くわけですよね。「皆今日は何が楽しかった?」って。


 まぁ先生の思惑としてはですよ。

 目の前に職員さんもいるわけですし、制作が楽しかったとか、こういう遊具(科学的な)が楽しかったとか、そういうのが欲しいわけですよ。


 けれど、やはりそこは子ども。

 

「滑り台(音が鳴る)が楽しかったです!」

「ボルダリング(科学関係ないやつ)が楽しかったです!」


 が多数でした。ちなみに我が息子はといいますと、


「パパとママとお弁当食べたのが楽しかったです!」


 科学も関係ない上に施設すら関係ねぇ――――――!!!


 いや、心あったまったけども! 我々の心はほっかほかですけども!


 まぁ、そんなハートウォーミングな行事が終わりましてですね、帰りは保護者の車で現地解散なわけです。で、帰る前にそこの売店で、一個だけ小さいおもちゃ買ったんです。今日の思い出に、ってことで。


 水に浸けると大きくなるっていう人形です。恐竜のやつで。


 それがですね、どれくらいの時間をかけてどれくらい大きくなるのか、っていうのがまぁポイントじゃないですか。


 まず、パッケージにはでかでかと『600』って数字が書かれているわけですよ。まだ3桁の数字とかよくわかってないですから、もうとにかくでかそう、みたいな感じですよ。


 ただね、これ、『600倍』じゃないんですよ。

 『600』なんです。


 つまり6倍!


 いや、6倍たって相当なもんですよ。

 あります? 日常生活の中で6倍に膨らむものとか。いや、あるのか。瞳孔でしたっけ。それはまぁ良いです。


 でも、子どもにしたらもうその『600』のインパクトが強すぎるわけです。完全に『600』のイメージですもん。

 一応ね、釘はさしましたよ? 


「こ、これはね、息子君、600%っていってね、まぁそれなりに大きくはなるけれども、えーっと、まぁ、これくらい(手のひらを広げて)、かなぁ~」


 って。


 そんでしかもこれ、『3日間水に浸けます』とか書いてあるわけです。3日っておい! 


 

 で、これを書いてる日がその3日目なんですけど。


 ごめん息子、ママ嘘ついたわ。

 手のひらサイズにすらなってない。ていうか、毎日見てるせいで、本当に大きくなったのかすらわからん。息子の成長はわかるけど、こいつの成長はまったくわからん。


 水に浸ける前に大きさ測っておけば良かった!!


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