第276話 猫も杓子もSKも

 普段あまりコンビニに行かないんですよ。


 別に近くにないわけじゃないんですけど、お買い物は行きつけのスーパーがありますし、そこってポイントカードにお金を入れられるタイプなんですよ。ほら、あのあれ。WAONみたいな。通じます? それに半月分の食費を(全額入れないのはもしもの時のための保険)入れているので、なるべくそこで買うようにしてるんです。


 それに、近いは近いんですけど、大きい道路渡る必要があって、ちょっと面倒なんですよね。


 そんなこんなで私の中でコンビニっていうのは、ちょっと遠出をする時に寄って、道中の飲み物とか眠気覚ましのガム(旦那用)を買いに行くところって感じです。


 さて、先日ですね、久しぶりにコンビニに立ち寄ったわけです。学校の行事で皆で科学館に行くことになり、子ども達は電車、保護者は現地集合だったものですから、ちょっと早めに行って近くのコンビニで時間をつぶそうということになりまして。


 そしたらね、発見したわけですね。


 『騎士団長 島耕作』ですよ。


 ――!?

 島耕作何やってんの?!

 お前日本のリーマンで課長からスタートして気付けば相談役にまで上りつめてたじゃん?! と思ったら、課長の前にもヤングやら学生やらのエピソードもあったりしたけれども、アンタいつのまにトラックに轢かれてんのよ!!


 もう全く、猫も杓子もSK耕作も異世界転生なわけです。

 

 島耕作をシリーズ読破しているらしい旦那に言わせると、どうやらこの『騎士団長~』を読むのならば、最低でも『課長~』は読んでおいた方が楽しめるのではないかとのことでした。

 というのも、『課長~』の本編で銃弾に倒れた方が一足お先に転生してきているらしいのです。これには『課長~』ファンも大喜びですよ。


 ていうか、島耕作って、銃弾が飛び交うようなシーンがあるの!? 武器商人なんでしたっけ?

 そもそも一体どこに出張したのよ?! ヨハネスブルク!?(もちろん『ヨハネスブルク』って書きたかっただけ)

 いや、ヨハネスブルクは言うほど銃弾が飛び交ってないのかな。


 

 さて、そんな衝撃を受けまくった久々のコンビニだったんですけど、その後入ったトイレでもさらなる衝撃というか、謎が私に襲い掛かって来たのです。


 田舎のコンビニの駐車場は広いって言いますけど、広いのは何も駐車場だけではないのです。何のためになのか、やたらとトイレも広かったりするんですよ。かといっておむつの交換台とかそういうがあるわけでもないんですけど。いや、あるところもあるのかもなんですけど、そこにはそういうものがなかったんですね。


 ただ、便器の隣に、テーブルがあるのです。

 洋式便器のぴったり隣に、高さをちゃんと合わせたテーブルが置いてあるんです。


 お荷物はここにどうぞ、っていうね、そういう感じの用途があるらしく、ご丁寧に『お荷物はこちらへ』みたいな張り紙もあるんです。そこはまだ良いんです。荷物が多い人もいるでしょうし、まさか床に置くわけにもいきませんから。


 ただ、そのテーブルには既に先客がいるわけです。


 フルーツ(たぶん)でした。


 こりゃまたえらく自然派な芳香剤だな、とも一瞬思ったわけですけども、そんなフルーティーな香りなんかしないわけです。何なら普通に芳香剤置いてましたしね。ラベンダーとかの。


 じゃあ、これはえらく自然派なオブジェ……? とも考えたんですけど、何かこうシャレオツなカゴに入ってるとかじゃなくて、完全に段ボールなんですよ。上の蓋部分を切り取った段ボール。フルーツ(たぶん)in 段ボール。実家でよく見たやつです。


「ちょっと~宇部さんいる~? ウチで採れたやつ置いてくから食べて~」

(勝手に外玄関に侵入してとりあえず一声かけてから放置して帰る)


 っていう。

 外玄関までは鍵かけてませんから、そこに置いて行かれるんですね。だいたいメモなんかありませんから、ハハーン、この感じは○○の▲▲さんね、みたいな推理能力が必要です。


 とにかくもう全然わからないわけです。

 ご自由にどうぞってことなんだろうかとも思ったりしましたが、トイレに置いてるフルーツ(たぶん)、持って帰ります? じゃあ遠慮なく……ってなります? しますよ、遠慮!! 嫌だよ! レジ横に置いてくれよ!


 ていうかね、さんざん(たぶん)って書いてるんですけど、とりあえず、私は見たことがないやつなんですよ。そんな野菜見たことないから、たぶん果物なんだろうと思うんですけど、ぶっちゃけそんな果物も見たことがないんですよね。どこか南国のやつなのかもしれません。洋梨のようにも見えるけど、何かごつごつしてて、じゃがいも感があるやつです。


 ただ久しぶりにちょっとコンビニ行っただけでこの有様ですよ。

 もうね、ネタの方から私に襲い掛かって来ているとしか思えない。



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