第273話 チンなのかピーなのか

 といえば、もうおわかりかと思いますが、電子レンジです。


 数年、いやもしかしたら十数年前かもですけど、レンジで温めることを『レンジでチン』あるいは『レンチン』って言ってたら、


「いまのレンジって『チン』って言わなくない?」


 とご指摘をいただいたんですね。それが誰からだったのか、そもそも私自身の話なのか、それとも誰かのエピソードだったのか、それすらもおぼろげではあるんですが。


 まぁとにかく、一理あるわけです。


 確かに最近のレンジは『チン』ではないな、と。ただ、独り暮らし用の小さいやつなんかはまだまだ『チン』って言ってる気がしますけど。

 それにウチの実家にあるレンジさんは、私が物心ついた時から家にあっていまも現役(確実に30年は使ってる。さすがナショナル製)でして、そのお方は『チン』なんです。ダイヤルを回して使うタイプなんです。トースターみたいな感じ。じゃあ『チン』でも良いじゃない。


 さて、そんなレンジさんですけど、誇張抜きに使わない日はないわけですよ。

 毎朝飲んでるカフェオレでもお世話になってますし、朝炊いたご飯はラップしてますので、夜食べる時にはそれも温めてもらってます。


 でも、まぁ、最悪、どちらもレンジなしでもいけるわけですよ。

 お湯や牛乳は沸かせば良いし、ご飯だってリゾットとかおじやとかそういう方法もありますし(炒飯を冷えたご飯で作れないタイプ)。


 でも、これだけは絶対無理と思ったのが、あれです。


 離乳食。


 もう5年以上前になりますけど、息子がまだ離乳食だった頃ですね、第一子ということもありまして、めちゃくちゃ頑張って手作りしてたんですよ。といっても、素材の味を生かしまくった感じといいますか、もうとにかく野菜をぐずぐずになるまで煮込んでつぶす、ってやつなんですけど。それを製氷器に入れて凍らせ、レンジで解凍して使う、っていうね。


 いや、これも火にかけりゃとけるんですけど、私へたくそなんで、ちょっと難しいんですよ。特におかゆが。


 そんなわけでもうめちゃくちゃ使い倒していたわけですよ、レンジさんを。いや、レンジ様を。


 そしたらですね、レンジ様の方では、連日の酷使に悲鳴を上げまくっていたんでしょうね、あのピーは断末魔の叫びだったのかもしれません。


 ある日、チンともピーとも鳴かなくなりましてね。

 鳴かないどころか、動きもしませんわ。


 私の中でレンジって実家のが基準になってますから、平気で30年くらいノーメンテナンスで使えるもんだと思ってましたから。もう衝撃でしたよね。これだからゆとり世代は、なんて思ったりして。


 しかしディスってもおだてても動かないものは動かない。

 息子のご飯がピンチ!!


 もう旦那に無理言って開店と同時に電気屋に乗り込みましたわ。旦那の出勤時間が当時遅めだったので助かりました。


 そんなこんなでやって来た我が家のオーブンレンジ様。そう、オーブン機能まで搭載されたやつを買ったんです。もうここまでくるとレンジ大明神とかそんな感じですよね。


 さて、我が家のレンジ大明神なんですけど、じゃ、彼はチンなのかピーなのか。気になるのはそこですよね(そこなの?)。もうね、ターンテーブルとかじゃないんですよ。くるくる回らない。くるくる回らなくてもちゃんと温まる。そんなハイテクレンジ大明神の鳴き声(鳴き声じゃねぇよ)とは――――!


 最初はピーだったんですけどね。

 買って3年位で急に何もしゃべらなくなりました。

 やはり主人に似るんでしょうね、隠密タイプに仕上がりましたわ。


 で、たまーに、かすかーにピーって言ってます。心の声が漏れてるのかな? まったく奥ゆかしいことこの上なし。主人に似たのねウフフ。



 ……何で私が使うとすぐ壊れるんでしょう。

 永遠の謎ですわ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る