第225話 ロマンティックあげるよ
かねてからお話ししている通り、ウチの息子君は年間360日くらいお絵描きしているお絵描き大好きっ子なんですが、それに触発されてか、最近では娘もちょいちょい絵を描くようになってきまして。
そこで思い出すんですよ。
子どもの絵って、こうだよな、って。
輪郭はまん丸だったり、あるいはやけに顎が鋭角だったりして、かと思えば頭頂部はまっ平らだったりして。
男も女も胴体は三角だったりして、あるいはただの筒だったりして、かと思えばあり得ない位置から両腕が生えてたりして。
息子はね、確かに絵は上手いんですけど、自分の描きたいものしか描かないという、齢3歳くらいにしてすでに
が、娘ちゃんはその辺柔軟です。これを描いてね、っていうものをちゃんと描けるのです。すごい! すごいよ娘ちゃん!
で、そんな新進気鋭(言ってみたかっただけ)のアーティスト、娘ちゃんが、なんとママの絵を描いてくれるというので、もうアレですよ、正座で待機です。出来上がったものを拝見しましたけど、もうね、天才かと思いましたわ。
まつげが目頭のみに集中し眉間に向かってわっさわっさと生えてたりね、明らかに肩じゃない位置から腕が生えてたりね、髪の毛がたてがみのようにぐるっと生えてたりしてね、もう天才かと。発想がもう天才のそれ。
そんで極めつけが、その絵を解説してくれた時の台詞ね。
「ロマンティックにしてみたの」
ロ マ ン テ ィ ッ ク !
まさか4歳にしてロマンティックをここまで理解しているとは。この世に溢れるすべてのロマンティックがこの一枚に凝縮されてるんですよ。これをロマンティックと呼ばずして何をロマンティックと呼ぶのか。もうロマンティックが止まらない!
旦那と2人肩を震わせておりますと、何と娘画伯気を良くしたのか「パパも描いてあげる!」というまさかのお言葉! これは大サービス! 息子の時には絶対なかったやつです。彼はもうとにかくヒーローとかロゴ(タイトルロゴとか企業ロゴが好き)が描きたいもんですから、我々のような変身もろくに出来ないぺーぺーの一般人には興味がなかったのです。
さて、何と今回はギャラリーの前で描いてくれるというライブスタイルのようでして、何やらニヤニヤしながらペン(色鉛筆)を振るいます。
「パパはキャラフル(おそらくカラフルのこと)にするねっ」
その宣言通り、もう輪郭からして緑です。
「くちべにをキャラフルにするから」
口紅!?
パパに!?
そう思いましたが我慢です。
ママの時は一色だったのに、と悔しさで旦那を睨みつけてみるものの、旦那はそんなのどこ吹く風です。さらさら描き上げられていく自分をうっとりと見つめています。
「できたぁ~」
出来上がりました、先生。描き上がりました。
――先生、今回のポイントは?
「口紅ですね。様々な色をあえて混ぜたりせず、層のようにしています。最も力を入れたポイントです」
――成る程、個性が光りますね。
「ええ、唯一無二のパパですからね、個性は重要です」
――ありがとうございました。インタビューは以上です。最後に今後の予定をお願いします。
「ありがとうございました。もう少し作品数が増えたら個展を開きますので、期待していてください」
――やる気充分の娘画伯でした。今後の活躍に期待ですね。
ねぇ、個展ってどこで開く気? ウチの壁?
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