第207話 超能力が使えた話

 子どもって、何か不思議な力があったりするじゃないですか。

 メジャーな話だと、トトロ的なものが見えたり、あと、お腹の中にいた時の記憶があったりとか、何かそういうやつ。

 先日の『第201話 ゼロワン』の、音漏れしてないはずなのに、仮面ライダー視聴中の居間にやって来たりとか、そういうのもそうです。


 だから、子どもが出来た時、何かそういうのがあるに違いないって、楽しみでもあり、ちょっと怖くもあったわけです。いま住んでる部屋で、『何か』が見えたりしたらどうしようとかね。

 


 で、『第145話 ひびきがこだまする』回の、出産で見られないであろう『大木こだまひびき』さんを見せてくれたりとかね、案の定何かしらあったわけです。子どもってすげぇ。そろそろお腹の中のこととか聞いても良いんじゃないかなって思う度にちょいちょい質問してみるんですけど、息子は「わかんなーい」ですよ。本当にわからないのかもしれないんですけど、それよりは、表現出来るほどの語彙力がないのかもなぁと思ってます。

 じゃあ、兄より口が達者な娘はどうだ!? そう思って聞いてみましたが、聞けば聞くほど登場人物が増えたり(○○くんとー、○○ちゃんとー、一緒におままごとしてたのー、ってそれ今日の園での出来事だよね?)するので、諦めました。まぁ、忘れてしまうくらい快適空間だったとね、思うことにします。私の腹の中に3人も4人も詰め込まないでいただきたい。


 さて、そんな不思議な力といえばですね、私もそういやそんなのがあったな、って。いえ、常にどこにいるのかわからない、だけど常に居間にいる、みたいな気配を消す能力がどうたらこうたらではありません。隠密スキルはそれはそれで不思議な力ではありますけど。


 小学生の時でした。

 ぴっかぴっかの1年生。右も左もわからない1年生ですよ。

 で、何かの集会だったと思うんですよ。1年生から6年生まで体育館に集まって何やらしておりました。


 そこでですね、ちらっと5年生か6年生のお姉さんの顔が目に入ったんですね。もちろん周りにはたくさんのお兄さんお姉さんがいるわけなんですけど、何でかそのお姉さん1人がどうしても気になって。


 その時私の頭にですね、ピコーン、って浮かんできたんです。


「この人、絶対『阿部』って名前……!」と。


 もう顔を見ればわかる、この人は『阿部』。間違いない。そして、事実、彼女は『阿部さん』だったのです。


 どこかで会ったりしたかな? とも思いましたが、『阿部(仮)さん』とは6歳も離れていますので、例えば幼稚園でも被らないわけです。そして、自分の知る限り、自分の行動範囲内に彼女は住んでいません。親同士が知り合いでー、ってこともないですし、姉とは3歳しか離れていませんので、姉の友人という線もありません。


 ただもうひたすら謎。

 だから、これはもう超能力的なやつとしか考えられないわけです。

 私にもそういう不思議な力があったのです、6歳の頃には。


 だけど……、何このピンポイントで『阿部さん』ってわかるだけの能力。

 しかもこれ一回きりだったんですけど。


 それとも何、私彼女と前世で何かあった?

 いやいや、前世で絡んでいたとしても、わかったのって名字だし。何なら下の名前はわからないわけですし。何この中途半端なやつ。


 いま、異世界転生系はちょっと変わったスキルでどうにかこうにかのし上がったり、快適ライフを送ったり逆ハーレムでウハウハするらしいじゃないですか。ということは、このピンポイント阿部能力でもどうにかこうにかすれば……?


 いや、無理。

 さすがに無理。

 阿部だけじゃ無理。

 阿部以外にも何か寄越せ。


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