好きなことを、好きなだけ

第155話 そこから薔薇の人

　まぁここでもさんざん書いてきましたけどね、私、香り好きでして。

　若い頃（20代）には、色んな香水を試してみたりもしまして。っていっても、まぁもちろん安いやつですけどね。

　香水はほら、ボトルなんかも可愛いじゃないですか。飾るだけでも良いっていうかね。でもさすがに子どもが産まれますと、あんまりそういう匂いがきついの駄目かなぁってしばらく遠ざかってまして。

　で、こないだ使いかけの香水を発掘しましてね、でもさすがにもう使えませんから、無理やりスプレー部分を取り除いて、ティッシュで芯を作って差し、玄関に置いてます。意外とそんなに香らないんですね。それはそれでちょうど良いかなって。

　さて、そんな匂い好きの私、以前働いていた職場ではですね、お昼にラジオを流してたんですね。まぁ、ごく普通の内容の番組なんですけど、特筆すべきはですね、その番組内のCMです。女性タレントなのかよくわかりませんけど、その人がもう早送りかなってスピードでですね、なのに一切噛まずにぺらぺらぺらぺらーってしゃべるんですよ。実はこれ、早送りなんじゃないのかな？　って思ったこともあるんですけど、その番組のMCの女性と絡みながら紹介するんですよ。その時も彼女だけ倍速みたいな速さでしゃべるわけです。成る程、これは別録りじゃないな、と。

　で、そこで紹介されていたのが、口臭とか体臭がバラの香りになるというサプリメント。

　そりゃあもう飛びつきましたとも。そんなのあるの！？　って。

　しかし、そのサプリはさすがにちょっとお高いのでね、D〇Cのやつにしましたけど。

　良いじゃないですか、身体からふわっとバラの香りなんて。

　もう気分はどこぞの姫ですよね。

　姫ってお前……って、引きました？　いやいや、その当時、まだ20代でしたからね？　ぎりぎりですよ、ぎりぎり。20代ならまだぎりぎり夢見ても良い年。いまだとね、もう西太后とかになっちゃいますけど、当時はまだほらぎりぎりディズニープリンセスでもいけたかなって。

　いや、そんなことは良いんです。

　そんなこんなでバラのサプリをね、飲んでみたわけです。

　まぁ正直ね、体臭の方はわかりません。

　ただね、口臭、これはね、すぐにわかりましたとも、

　胃の中から香って来るってやつです。ブレス〇アみたいな感じですよね。

　手のひらにね、はぁっとするとね、うん、成る程、バラの香り。

　いまこの瞬間、私のこの口臭だけはプリンセスだな、と。

　口内でミュージカル始まってんな、と。

　歌って踊ってましたわ、舞台はバラ園ですわ。王子と後に姫となる庶民の娘が出会ってますわ、これ。

　ただ、そのサプリ、いまはもう使っていません。

　なぜかわかりますか。

　お金が続かなかったから？

　いえいえ、そんな高いやつじゃないですからね？　全然そんな家計を圧迫なんてしませんしません。

　正解はね、げっぷまでバラの香りになったから、でした！　まぁそりゃそうでしょうね、胃の中から香ってくるわけですから。

　あのですね、確かにげっぷって、きれいなものではないです。

　でもね、何かこう、美味しいものを食べたりしてね、げふぅ、ってそこでまた余韻っていうかね、そういうのあるじゃないですか。餃子食べてね、アハハ、にんにくくさーい、とかね。

　それがね、バラなの。

　何食べてもめちゃくちゃノーブルなの。

　何を食べてもディズニーミュージカルなの。

　私はディズニーに何か恨みでもあるのか。

　ただね、そういうわけです。

　げっぷはね、バラの香りになって良いものではありませんでした。