第153話 名前、必要?

 漫画でも小説でもアニメでもドラマでも映画でも、ずーっと、ず――――っと疑問だったんですよ。


 そこに名前って書くものなの? っていう。


 メールですよ、メール。


件名:お疲れ様です

本文:例の件、了解しました。

           佐藤


 みたいなやつです。

 そこにいる? 『佐藤』の情報!?


 しかし、これは明らかにビジネスメール。

 もしかしたらビジネスの世界では、例え携帯メールのやりとりでアドレスもしっかり登録していて差出人のところに佐藤某と表示されていても、それでも文の終わりには名前を入力するのが礼儀なのかもしれない。自分の判子は斜めに捺してあたかもお辞儀をしているようにするべき、なんて良くわからないマナーがあるみたいですからね、ビジネスの世界では。


 まだ何となくPCメールならばわかるんですけどね、会社の共用PCで個人アドレスがない場合もあるでしょうしね? 

 でもね、携帯よ?


 ビジネスっぽい文面にしちゃったらあれですけど、これ恋人同士とかでもそうですからね。



件名:今日は楽しかったよ

本文:今度は進撃の巨人見に行こうね😊

           まなみ      


 こういうのとかね。

 いやいや、差出人のところにもあるんでしょ? まなみの情報! お前ら付き合ってんじゃねぇのかいっ!

 

 私の好きな作家さんの小説の中にもそういう描写があってですね。いや、進撃の巨人のことはもちろん書かれてませんけど。ちょっと喧嘩をしてですね、で、仲直りして、っていう流れで。最後に名前が。


 いる?

 そこに名前いるかなぁ?


 アドレス登録してないの?

 出てるでしょ、上の方に!?


 もしかしてこれって読者のためだったりするんでしょうか。

 いちいち「あ、まなみからだ」とか独り言を呟いてからメール確認するなんてわざとらしいですしね。漫画や小説ならそういう心の中の呟きが目に見える形で書かれてたりしますけど。


 でもまぁ、そんな部分にイチイチ突っ込み入れてもねぇ、なんて思いつつ、だけどやっぱりちょっともやもやしていたわけなんですが。


 LINEですよ。


 LINEってあれ、皆さん本名にしてます?

 私、全然本名じゃないんですよ。私の周りも、あんまり本名っていうか、フルネームの人いないんですよ。


 田中花子さんなら、『たなか』、『はなこ』、『はなちゃん』、これくらいのはまだわかるんですけど、『🌸Flower🌸』くらいの人もざらにいるといいますか。まぁ、「花子さんだから、花を英語で『Flower』かぁ」ならまだレベル2くらいなんですけど、これがレベル10くらいになりますと、『もんきち』くらいの飛距離があるわけです。小学生時代のあだ名とか、見た目がちょっとサルっぽいとか、その人を深く知らないと連想出来ない名前。


 かくいう私も、仮に旧姓が『鈴木松清』で、結婚して『宇部松清』になったとしますと、LINEでの名前は『鈴子』みたいな。昔からそう呼ばれてたんです。『名字の一部+子』で。なので宇部姓になってから知り合った方は「??」ですよ。「え? 宇部さんの下の名前って鈴子でした?」みたいなことになる。


 それでも、私のコミュニティなんてごくごく狭い範囲ですし、その『鈴子(仮名)呼び』を知っている人しかいなかったのでそれでも良かったんですよ。


 が。

 ここへ来て。

 息子が小学校に入ってですね。

 読み聞かせのボランティアに参加することになりまして。子ども達に読み聞かせをする、っていう。まんまですね。

 それの、読んだ本の報告(被り防止)とか、子ども達の反応などをLINEで共有することになったのです。


 さぁ困った。

 

 他のママさんも皆本名からかなり飛距離のある名前です。そもそも本名と顔も一致してないところへ、この追加情報はキツい。


 そしたらもう、あれですよ。


 完全に定着するまで名乗ってもらうしかない。


 とはいえ、「私5回くらい自己紹介してもらわないと顔と名前を覚えられません」なんて言えるわけもなく。

 とりあえず、私が毎回名乗っておけば、他の人もつられてやってくれるかも! と淡い期待を胸に、毎回名乗ることにしました。


鈴子(仮名)『宇部息子の母です。本日は○組で○○を読みました。子ども達の反応は~』


 だけどたまに忘れたりして、慌てて、


鈴子(仮名)『宇部息子の母でした。』


 って。

 古畑任三郎みたいに〆たりして。


 成る程ねぇ、そこに名前って必要だったのね、と。


 いや、そういうことじゃないけどね?


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