第147話 女子に必須のスキル

 忘れてる方がね、いるかもしれないと思って、一応もう一回ここで言っときますけどね、私、宇部、女なんですよ。『宇部 松清』なんてペンネームにしてますけどね、女。いや、『松清マツキヨ』が男性名なのかって疑問もあるにはありますけどね? そもそもこれ『マツモトキヨシ』からとってますから。だったら男性名だわ。そりゃそうだ。


 さて、女として30年以上(とりあえずぼかしてみる)生きて来たわけですけど、一応私もピチピチの(古い)女子大生とか、OLとかね、経験してるんです。だけれども、このスキルはないな、っていうのがありまして。


 ほら、あれ。

 若い女の子がよくやるあれよ、あれ。


 大皿から取り分けるやつよ。


 そもそも盛り付けがへったくそなんですよ。食べられれば良いじゃんの精神で生きてるっていうか、腹に入れば同じじゃん? って色気の欠片もない思考なものですから。


 別にそれを公言してたわけでもないんですけどね、何となく、何となーく、その役目も回ってこないんですよ。


 大学時代の新歓コンパでは、お客様ポジションだからなのか、先輩がやってくれました。そしてその翌年、よっしゃ今回は私の出番か、と意気込んでいると、その新入生の可愛い子ちゃんがせっせとやってくれたりして。これがまた繊細な盛り付けをしてくれるんですよ。その盛り付け、どこで習ったの? 段持ってるでしょ、ってくらいの。


 で、社会に出てもおんなじ感じ。新卒時代は「良いよ良いよ松清ちゃんは黙って座ってて」ですし、先輩になったらなったで「はい宇部さん、どうぞ」って。


 おっかしいなぁ。

 サラダを取り分けたりして女子力を見せつけるはずだったのに。まぁ、女子力なんて3くらいしかないけど。なけなしの女子力でサラダを取り分ける気だったんだけど。たぶん最初の方はトマトが山盛りで、最後の人はレタスしか残ってない感じになると思うけど。


 で、そんな取り分け能力といいますか、盛り付けセンス0の私がですね、鍋料理を作るとどうなるか、って話なんですよ。


 いや、あのCMみたいな感じってどうやるの?

 まず煮えにくいものから入れるじゃない?

 そんで、次にあれも入れてグツグツ、これも入れてグツグツってやるわけじゃない?


 で、こう、ぼやーっと、この辺にこれ、この辺にこれ、で、底の方にこれがあるから、お玉でぐわっと掬ってね、っていう鍋になるんですけど。


 いや、ほら、腹に入れば一緒ですしね?


 マジでマジで。

 あのパッケージみたいな鍋って無理じゃない? ニンジンとか下茹ででもしてないと無理じゃない?


 居酒屋とかの鍋ってあれどうなってんの? あれがプロの技なの!?


 もうその辺が壊滅的。

 盛り付けスキル0。

 こんなんでは生き馬の目を抜く異世界で通用しませんよ。


 もうね、異世界ではね、盛り付けスキル100とかの転生者がね、私みたいな盛り付け原人に力の差を見せつけてくるわけ。トマトの中身をくりぬいたりしてくるわけ。そしたらもう私いちいち腰抜かして「こ、こんな斬新な盛り付けは見たことないっ!」とか言ったりするわけ。もう完全にその台詞を言うためだけに存在してる村の権力者の腰巾着みたいなポジションなわけ。


 まぁ、そんな私ですけどね、案外人生何とかなっているので、私のように盛り付け下手な女子もですね、諦めずに(何を)頑張っていただけたら、ってね。


 ご清聴ありがとうございました。

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