第108話 まさか出来るとは知らなんだ

 いっこく堂さん、いるじゃないですか。

 あの、声が遅れて聞こえてくる、あの腹話術のスペシャリストさん。腹話術しながらモノマネするとか、もはや人智の及ばないところまで来ている方です。実は後頭部に第2の口があります、とか言われても「だと思ったー」としか言われなさそう。


 彼のね、インタビューとかだったと思うんですよ。確かいっこく堂さんが腹話術に出会った時の話だったかな。

 腹話術を始めようと思ってなのか、それに出会ったから腹話術を始めたのか、その辺は覚えてないんですけど、腹話術の本を読んだそうです。その本を読んで練習したらしいんですけど、その本、確か図書館とか古本とか、とにかくそういう『新品』じゃないやつで、一部落丁してたみたいで。


 ちょうどね、大事なページがなかったらしいんですよ。

 それが『パ行』に関するページだったらしいんです。


 恐らくそこには、『腹話術でパ行を発音するのは不可能』みたいなことが書かれていたんじゃないかって話なんですけど、それがなかったもんですから、彼はそれが『出来ないこと』だと知らなかったんです。だから、難しいけど、練習すれば出来るんだろうって努力し続けた結果、パ行の発声も出来るようになった、と。


 知らなかったから。

 出来ないと思わなかったから。


 ただ、いっこく堂さんのWikipediaを見ても、そんなこと書いてないんです。だからね、もしかしたらこれも私の捏造である可能性もあります。テレビで見た気がするんですけどねぇ。ただ、事実として、いっこく堂さんはパ行も発声出来るんですよ。それは恐らく皆さんもご存知かと。


 つまり、何が言いたいか、というとですね。

 出来ないことだと知らずに、出来ると思って努力すれば、案外何でも出来たりする、っていう話なんです。



 さて、息子の話です。

 皆さんもご存知、未来のジュノンボーイ準グランプリにして、宇部家きっての爽やかモテモテボーイ、息子君(6歳)です。


 彼はね、まぁさんざんこのエッセイでも述べてきましたけど、歌をね、よく歌ってくれるんです。


 息子がどうやって歌を覚えるか。

 それはもう完全に耳コピなわけです。まぁ、だいたい皆さんそうでしょうけども。

 歌詞もひらがなとカタカナなら読めますけど、漢字とか英単語は無理ですし。いまのアニメとか特撮って歌詞流れないみたいで。


 で、皆さんご存知の通り、イントロから効果音からばっちり耳コピして歌ってくれるわけですけど。

 わからない言葉や英語の部分は「ウェイウェイ」で何となく歌ってくれる彼なんですけど。

 なんと。


 ビブラートまで完コピ!!!


 お前、ビブラートとか出来んの!?


 震えましたよ。

 彼の声も震えましたが、親である我々も震えました。

 

 まぁビブラートっていうよりは、こぶし? あの演歌みたいな「えぃえぃえぃえぃ……」って感じなんですけど、最近ちょっと良い感じに調整されてきて、より一層ビブラート感が増してきたのです。


 息子よ、それは母が中学生の時に友人に習って一生懸命特訓したやつ……。


 だって昔の特撮とかって、ささきいさお氏とか、子門真人氏とか、水木の兄貴なものですから。そりゃ完コピしようとしたらそこも真似ますよ。

 

 子門真人氏のやつは、ちゃんと、ちょっとねばっこく歌ってくれるのがまた笑いを誘います。

 最近のヒットは『赤い通り魔』こと『レッドマン』です。


 あいつ、とうとう両親が完全に知らないやつまで……。

 ていうか、どうやって検索したんだよ。



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