第103話 そして麦茶に戻る

 麦茶って、実家感すごくないですか。


 夏。

 それも田舎の夏。


 照りつける太陽。

 始まったばかりの夏休み。

 ラジオ体操のせいで早起き。

 とりあえず初日くらいは計画的に取り組んでみる宿題。

 昼は素麺。

 夜はドリフを見てちょっとだけ夜更かし。

 

 そんなノスタルジックな感じに溶け込む憎い飲み物。水滴のいっぱいついたコップに並々と注がれた麦茶。氷もたくさん入ってて、キンキンに冷えてるわけです。

 

 もちろん煮出して作ったやつ。シンクにはいつも、水の張った洗い桶に麦茶入りのやかんが入ってました。


 そんな麦茶がね。


 私。


 嫌いでして。



 もー台無しね。ノスタルジックな感じが一気に台無し。宇部ってほんとそういうところある。


 特に実家の麦茶はですね、大量に作りすぎるせいか、最後の方ちょっとすっかいんですよ。……すっかい。方言らしいですね。酸っぱいんです。


「お母さん、麦茶すっかくなってるー」

「じゃ、それ投げ(捨て)て新しいの入れれー」


 ってね。

 で、麦茶ポットを洗って、やかんの中の麦茶(まだ温い)を注ぎ、冷蔵庫へ。氷をたくさん入れるのは、暑いからというよりは、まだ温い場合もあるから。


 でもね、飲み物ってそれくらいしかないんです。何度も言うようにジュースなんてないですから。それ以外は牛乳or水道水。そりゃ麦茶を飲むしかない。


 だからね、独り暮らしを始めた時、私は何はなくともまず買いましたよね。


 烏龍茶のパックを。


 何せペットボトルは経済的じゃありませんから。こちとら仕送りいただいている身ですから!


 仕送りといえば、それとセットになっているのが定期的に送られてくる救援物資なのですが、その話も書こうとしたらですね、さすがにとんでもない字数になってしまったので、それはまた明日にしますけど。


 とりあえず今日は救援物資の話がしたいんじゃない。いや、その段ボールの中には麦茶のパックもたぶん入ってた気がしますが。なかなか麦茶輪廻から逃れられない。というわけで麦茶好きの友人にあげたりして。

 ごめんね、母さん。だけど私は麦茶から脱却したいの! 


 烏龍茶やら緑茶やら、たまには気取ってお紅茶なんてね、そんなのも飲んだりして。それでもやっぱりコーヒーはね、がぶがぶ飲んでました。大学生ですからね、勉強もしなくちゃなわけですから、そういうお供としてもコーヒーは必須ですし。


 さて、そんなこんなで麦茶から遠ざかること数年。

 このまま私は脱麦茶してしまうのか、出来るのか!? 思っていたその時!!


 ……やはりね。

 やはり我々日本人は麦茶の呪縛からは逃れられない運命なのです。



 妊娠中は、カフェイン駄目なんですって。


 な、何だって――――!!

 

 えっ?! 授乳中も!?


 ま、まぁ、そのためにノンカフェインのコーヒーがあるわけですから! ってことでね。

 ただ、さすがの味音痴な私でもノンカフェインのコーヒーはちょっと違うなーって思いつつ、でもコーヒーっぽい味するから良いやー、なんてね、飲んでたわけですけど。


 問題はね、私じゃない。


 子どもの方!!


 何、子どももカフェイン駄目なの?!

 湯冷ましor薄めた麦茶!?

 

 自販機にはね、湯冷ましなんて売ってませんから。まぁ、麦茶も絶対あるかって言われたら……まぁ……、ですけど。


 ミルク飲んでるうちはまだ良いんですけど、離乳食が始まり、普通のご飯が食べられるようになり……となりますと、もう食卓には麦茶しか並ばないわけです。麦茶一択。間違えて飲ませたりしたら大変なので、色が紛らわしい烏龍茶とかそういうのは絶対に置きません。


 一体いつからカフェインOKになるのかわかりませんが、夏場なんかはミネラルの補給も重要ですからね。もうやっぱり麦茶一択。


 もしかしてウチの実家もそういう経緯で麦茶に……?

 

 なんて一瞬思いましたが、いや、違うな。

 ウチの場合はもう最初から麦茶だわ。

 

 

 そんなわけで現在の宇部家もやはり麦茶一択なのでした。安心して飲ませられるからね、仕方ないね。


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