第104話 アイディアの母

 というわけでね、仕送りと双璧をなす親からの援助、『救援物資』、これについてね、今日はお話をしたいわけ。


 やはり、親というものは離れた土地にいる子どものことがとにかく心配なわけでして、ちょいちょい段ボールにね、私の好物らしいものをぎゅうぎゅうに詰めて送ってきてくれたわけです。


 ただね、えーと、どちらの娘さんと勘違いしてらっしゃるのかしら? というラインナップでしたけど。


 たぶん両親の思い描く『わたしたちのさいきょうのむすめ』でしょうね。断じて私ではないです。何かよくわからない輸入菓子みたいなのが入っていたりしましたから。えーと、あんまり美味しくなかったです。甘くてねちょっとしてるか、甘くて粉っぽいか、みたいな。何かもうとにかく甘い。喉が焼けるほど甘いやつ。

 もしこれがガチで私の好物だと思っているのだとしたら、いっそ呆けを疑うところなんですけど、ネタで送ってるとしても質が悪い。どっちに転んでもふざけんな、っていう感想しかない味でした。


 さて、当時の母は緩衝材としてトイレットペーパーを入れてくれてたんですよ。隙間にね、袋からバラしたやつを、ぎゅっ、て。これは、嬉しいですよ。だってほら、緩衝材なんてね、ある意味ゴミですから。それをね、使えるものにする辺り、さすが主婦!! 見習いたい、その発想力! ヨッ、アイディア大将!!



 ……ただね、潰れたトイレットペーパーはなかなか上手く回ってくれないという点はね、よく覚えておいてほしい。

 ンガラッ……ンガラッ、っていう感じね。そんなリズム刻んでくるから。こっちのリズム乱してくるから。


 でもどや顔で「母さん賢いでしょ」なんて言われちゃったら、まさか「リズムが最悪」って言えなくてね。「エジソンも真っ青」ってとりあえず返しましたけど。「小室哲哉もびっくり」と迷いましたが。それとなくリズムが最悪ってことを伝えようかなって。伝えたいこの思い。だけど可哀想なんで止めました。まったく親孝行な娘だぜ。


 ちなみにいまも『物資』は送られてきます。

 とはいえ、もうこちらもちゃんと稼いでますんでね。『救援』でもないですけど。

 『救援』物資というよりは、『可愛い孫ちゃんへ、北海道から愛を込めて』みたいな、そういうメッセージを強く感じるラインナップ。

 というのも、基本的には私のリクエスト(こっちで売ってない北海道のもの)ですとか、○○祝だったりするんですけど、そのついでに子ども向けのお菓子がぎっしりと、メインを完全に食う勢いで入っているわけです。むしろメインのやつが隙間に挟まってる感じに見えなくもない。


 で、それらと共に隙間に入っているものといえば、あれです。

 やきそば弁当。


 北海道のソウルフード。カップ焼きそばといえばこれ。私はカップ焼きそばは一平ちゃんか焼きそば弁当と決めているのです。バゴォーンに浮気などしない。じゃあ一平ちゃんは何なのかって? いや、ウチ一夫二妻制なんですよ。


 まぁ、カップ麺が隙間に入っているというのもおかしな話ですけどね。隙間というよりは段ボールの上の方があいてる時とかに入ってる感じ。


 本当の隙間に詰まっているのはね。


 ビタミンカステーラ。これ。


 17話に出て来た、あの、ぱっさぱさのやつね。あれが詰められてます。


 ここでもね、出ましたよ。「母さん賢いでしょ」って。もちろんあのどや顔でね。眼鏡かけていたら、間違いなくクイクイしてたでしょうね。かけてないけど。


 だからもう言うしかないですよね。ヨッ、隙間空間のマエストロ! って。それくらいは言ったかもしれませんし、「さっすがー」で済ませた気もします。


 あー、はいはい、だったかもしれません。

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