第94話 大人の事情

 大人の事情ってあるじゃないですか。

 いやもちろん、子どもの方にもね、子どもなりの事情とやらがあるのはわかる。

 でも今回は大人の事情で語りたいわけ。荒ぶりたいわけ。鬼神の如く。鬼神の如くにね。いや、鬼神ほどじゃなくても良い。


 昔のアニメなんかでも、急に打ち切りになって話数が減ったりとか、仮面ライダーアマゾンとか、あれ何であんなに話数少ないのよ、とかね。アマゾンは人気がないからとか、グロすぎてPTAの苦情が、とかね、色々言われたみたいですけど、あれ結局最初からそう決まってたみたいなことがWikipediaに書いてました。そうなんだー、私てっきり苦情来たかと思ってました。いくら昭和でもやって良いことと悪いことがある……というか、いや、私的にはああいうの大好物です。息子もね、大好きですね、アマゾン。背びれがぴこぴこ動くのも最高にキュート。変身前もあの肉体美最高よ。昔のイケメンはどんな恰好でもイケメンだわ。ふふ。


 ていうか、アマゾンがアウトなら、V3の結城丈二の手を溶かすシーンとかそういうのもアウトだろ! と私は思うわけですけど、それは良いです。

 全然関係ないですけど、『結城』って名字憧れますよね。もう絶対主人公。でも残念、この世界には『風見』がいたのです。『風見』もなかなかの強カード。『風見』VS『結城』。主役は『風見』に譲りました。でも良いの、ライダーマンも恰好良いから。


 違うんですよ、そういう話をしたいんじゃない。いや、したいけど、そうじゃない。


 今日はね、ウルトラマンAエースの話をしたい。AのOPの話がしたいの。どうしても。


 特撮が好きだといってもですね、私もまぁ少々遠ざかっていた時期があるといいますか、それなりにウェイウェイな時期があったというかね、特撮系は歌を聞くだけ、くらいの距離感だった時期があったのです。


 で、ウルトラマンの全集(もちろん戦隊ヒーローと仮面ライダーのも)みたいなの借りてきてね、独り暮らしだから聞き放題だー、なんつってね、聞いていて「あれ?」と思ったのです。


 Aの歌、何か違わない? と。

 私の知ってる歌詞が出て来ないんだけど、って。


 聞き逃した? まさか。

 でもちょっともう一回集中して聞いてみようかな。

 ……うん、やっぱりない。


 いざけ、がない!


 いざけ、いざけ、ウルトラマンAだろ?

 たたかえ、たたかえ、ウルトラマンAしかないけど?

 行かねぇの? A、行かねぇの?


 ええ、私の記憶が間違ってたの?

 と、もやもやしつつも、まぁ子どもの記憶だからなぁ、なんて過ごしていたわけです。



 時は流れ、現在。


 息子がお気に入りのDVD。『ウルトラマンAのすべて』。もうたぶん10回くらい借りてるやつです(もう買えよ)。


 もちろん元は古いVHSのやつですけどね。


 そしたら、アナタ!

 それはちゃんと『いざ行け』なんですよ!! ほら! ほらね!! やっぱり『いざ行け』あったじゃん!! 行くんじゃん!


 って、私はすっきりしたわけです。

 あー良かった。私、記憶力には自信があったんです。直前のことは覚えられないけど、昔のことは良く覚えてるタイプ。


 ただね、このよくわからない大人の事情によって変わってしまった歌詞に被害を受けた人物がもう一人ね、いるわけです。


 息子ね。


 車の中でねAを流すじゃないですか、以前も書きましたけどね、彼は歌いますから。イントロからいきますから。


 デッデデーン、デデデ、デッデデーン、チャラララチャラララ、チャッチャーチャチャーチャーチャー、ボワワワーン、タカタカタンッ、テケテケテー、テケテケテー、とっおーくかぁーがやっくよーぞらっのっほっしっに♪


 ってね。

 機嫌よくね、歌ってね。微笑ましい車内ムードに我々も思わずにっこりですよ。


 が。


「いっざーゆ……え? いざ? たーかえー?」


 息子、混乱。


 これはね、大人に責任がありますよ。

 歌詞を変えるんならね、すべての作品の歌詞を変えろ、と。


 息子よ、いまは耐えろ。

 そういうものだと割り切るんだ。


 そうやって大人になっていくんだよ。

 

 

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