季節殺し

夢見里 龍

目録

《 人物録 》

   季節は巡る 人もまた 巡る

   出逢いと別れを繰りかえし 様々な想いを残して 

   環を象りながら 季節と人は巡っていく

 


             登場人物 



     セツ 


   彼は季節を愛した 季節もまた彼を愛している

   その愛が 彼を彼たらしめるだろう

   御胸みむねに抱き寄せ 肌を重ね

   あぎとで食み 指を絡め 

   呼吸をかわし 脈を分かつように

   彼は季節を愛している


 季節の循環を修復する《季環師きかんし》の青年である。美しき少女を連れて各地を巡っている。穏やかにして、柔軟。冬の終わらない町にたどり着き、季節と人を巡る長き因縁に巻きこまれていく。




     クワイヤ


   彼女は美しい 

   純真にして清廉 秀麗なりて可憐

   彼女は何者にも跪くことはない 彼女は何者にも媚びることはない

   華麗にして無垢 崇高でありて荘厳

     されど ともなうならば 

   美しき彼女に外套を なにも畏れぬ彼女に《恐れ》の鎖を

   あゝ それでも彼女は美しい

  

 季環師セツの相棒たる美しき少女――素性はまったくもって不詳である。

 時に傲慢で、時に臆病だが、非常に可愛らしく純真無垢。にんげん嫌いではあるものの相棒のことだけは愛慕しており、決して側を離れることはない。




     ハルビア・ルゥ・ノルテ


   彼女は春を愛した

   幼き頃にみた 数十頁の紙の春

   愛してしまったのは罪なりや 春を望むのは罪なりや

   いずれにしても彼女は裁かれる 彼女を慈しむひとの愛で


 町にある宿屋の娘。生まれつき脚が動かず、車椅子に乗って暮らしている。幼い頃に親をなくしたが、町に愛されて育ち、笑顔を絶やすことはない。不幸の影を持たぬ娘。ただひとつ、望むは春。

 彼女の願いが季節を動かす。




     エンダ・ディ・ノルテ

 

   彼は樹 その枝葉をもって 雪を凌ぐ

   彼は樹 その根を張りて 凍原に立ち続ける

     されど 彼は樹

   此処より僅かも動くことはできぬ

   故にどうか 木蔭を去りゆくなかれ 君よ 

  

 自警隊の隊長を務める若者であり、春を望む娘の幼馴染である。融通が利かず不愛想だが、根は優しい。愛するものを護る為ならば、身を投げだすほどの強い意志を携えている。

 



     ヨウジュ・ゴァ・ノルテ


   彼は友を奪われた 季節の祟りによって

   彼はなおも奪われる

   しかれど それは真実 季節の所為だったのか

   斯くして老木は疑いを擁く  


 町の医者である。表情を変えることがめったになく、言葉の端々もとがっているので堅物だと誤解を受けるが、実際は柔軟な思考を持ちあわせている。彼の薬は古書の知識に基づいて調合されており、季環師の薬学と重なるところもあるようだ。

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