第395話屋敷へ
焼け焦げた匂いは数日経っても消えない。それなりに離れていてもだ。人に油、その他多くの物が燃えれば当然といえば当然だが悪臭が漂う。
こんな所で待ち合わせなんてしなければ良かったと後悔しながら待つ。
一時間程度だろうか?待っていると両手で女性を抱えた男が来た。
「よぉ兄さん待たせたかい?」
まるで近所の知人に挨拶するかのように気軽に挨拶してくるなこいつ。変にかしこまれるよりはマシだが。
「待つって程の時間は経って無い。それで? その抱えてるのが件の同僚か?」
「おうよ、兄さんには悪いが一度この嬢ちゃんをどうにかしたい。こちとら別れを済ませてすぐにこっちに来たから、そのままなんだ」
生臭い匂いがする。あの匂いだろうなこれは、死ぬ直前まで愉しんでたようだ。さてどうするべきか。楽園は俺が嫌だ。後は、ミルに任せるのも・・・不安がある。
そういえば適任ではないがある意味プロがいたな。説明すればやってくれるそうではある。
「分かったまずは知り合いの女性に任せよう。身の振り方以前にその状態ではあまりにも忍びない。とりあえずお前も来い」
「何処にいくんだ?」
転移符を取り出し起動する。行き先は俺の屋敷だ。
ーーーーーーー
この部屋は相変わらず埃一つ無い。毎日清掃しているのだろう。主はほぼ使わないので程ほどでいいのだがな。
「兄さんこれは転移魔術ってやつかい?俺は初めてみたぜ?」
「師に恵まれてな、お陰様でこんな芸当もできる」
それより気付いたみたいだな。部屋の外から足音が聞こえてくる。足音が止まり、ドアを三回叩く音がする。
「開いている、入れ」
「失礼します」
初老の男は流れるような所作で俺の前まで来て膝を付く。
「お久しぶりでございます」
「久しいな。早速で悪いがあの二人を連れて来てくれ。急ぎ頼みたい事がある」
「畏まりました」
そう言うと急ぎ部屋を出て行った。ドアを閉める音一つ出さずに素早く。よくやる物だと感心するな。
「所でお前名前はなんと言うのだ?」
鑑定してみたが抱えてる女も男も能力は見えるが名前が見えない。
「兄さん俺もこの嬢ちゃんも、もう名前はねぇんだ。クズと一緒に葬っちまった。良ければ付けてくれねぇか?」
「俺でいいのか?」
「恩人だからこそ頼みたい。この世界じゃ他に繫がりもねぇ、これから協力する事もあるだろう」
「考えておく。文句は言うなよ?」
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