第388話中身はボロボロ

「選択権があると考えていいのか?お前が命令すれば俺は従う他無いのだが」


「選択権を認めます。命令する権利こそあれど基本的にするつもりはありません」


 俺の意志でって事ね。


「じゃあ断る。何でお前に対してこの程度の嫌悪感で済んでいるか自分でも理解できないが、本来であれば何がなんでも消し去りたいくらいの憎悪は感じるはずなんだが」



「うんうん、断れるうちはまだ大丈夫かな? でも危ない状態なのは確かだからね? 器その物も危ないのに魂の変容の危機まである。なんの拷問なの? 君さ、死んだら魂すら、いや存在の軌跡すら残らなくなってしまうよ? 魂魄の状態で神に裁かれて消滅って言うならまだしも、それはあまりにも悲しいよ」


 そうなのか? いや、確かめれる。鑑定を細分化して数値として叩き出せばいい。丁度単語は今しがた出てきたのだから。魂、器、存在。指定してしまえば分かるはずだ。


「止めといた方がいいよ」


 知らん、状況の確認は必須だろう。














 出来た。面白いくらい残酷に人格破損率45% 魂の破損率30% 存在の破損率65% 器の破損率85%だと、これは助からないんじゃないか? 思い返せばこの数値に思い当たる所はある。


 人格はアリアへの体の一時譲渡、魂は歌の無理やりすぎる練習。器は他と桁が違う思考の数値。そしてこの要因の全てが存在その物への悪影響を起こしている。


 そしてこの存在の破損率とやらが限界に達した時アリアと同じように全てから忘れられる運命を辿るかそれ以上の何かが起こるんだろうな。


「だからこそもう一度提案するよ、あの島で平穏に生きよう。まだ間に合うよ」


 いちいち思考を読むんじゃねぇよ。



「その問いをする意味はあるのか?」



「無くても、し続けるよ、君の意志が心のそこから変わるまで。そうじゃないと助からない、それにどう足掻いたって君だ。あり方が美しいと思った所でそうはあれないよ、自分で分かっているでしょう?」



 そりゃそうだ。同じ製法同じ素材を使ったワインだって元々あった樽の中に薄汚れた泥が入っていれば意味は無い。泥がワインになろうとしたって土台無理な話だ。それに消えるならサバッと消えるのもまた一興、悲しむ者も出ない。



「出なくても心の穴は、いいや世界に空白と言う形で残る。縁がある者達は様々な方法で空白の部分にあったものを探すと思うよ、そして真実にたどり着けた者は君に近ければ…好きであればそうあるほど悲しむ事になるの」



 ルイはどうだったのだろうな? それと一つ思うのだが何故こいつは俺を助けようとする。メリットが一切見えない。



「俺はお前から見れば不穏分子のような物のはずだ」



「愚かで矮小で短慮であってもそのあり方その物は私は好きだから。他に理由が無いわけでも無いけどそれは乙女の秘密」


「なにが乙女だ最古のババアじゃねぇか」

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