第359話違和感

言葉こそ懇願する様に下手に出ているが、こんな物を着けさせようとしている時点でアウトだ。それにこの視線は気分が悪い。何度か全員始末するかと思案した程だ。



 それに対して兵士や姫君の対応は真逆のソレだ。巨壁の国での俺の扱いに似た物がある。魔王とやらが攻めて来ているのは本当らしい。



 因みにここでの俺だが無知の学生という設定だ。指示には素直に従い、戦闘訓練では有能である必要があるので、ある程度の魔術と武術を晒している。この方が動きやすいからだ。と言っても当然兵士の中での上位の実力者には敵わない。残念ながら俺の物理戦闘での火力は褒められるレベルではないのだ。



 数日この様に猫を被って過ごしている。その甲斐もあり、それなりに良い情報を仕入れる事が出来た。禁書庫以外の本の閲覧が可能なのと、俺への自由がかなり認められているからだ。



 どうやらこの指輪着けると外れなくなるようで、いざとなれば命令すれば良いと言う判断なのだろう。イミテーション着けているのに気付きもしない節穴ばかりで大助かりだ。





 当然ではあるが指輪の解析はした。叛意があれば激痛に苛まれるようで、命令されれば意志とは関係なく命令を遂行するらしい。現在では指輪に下る命令をこちらで把握できる様に細工を施した。未だ命令は無いのだが、城のセキュリティーに関してだが、人的には堅牢。魔術的にはお粗末と言う評価である。ただ一箇所だけ異常な結界と監視体制の場所があり、そこは入り込む事こそ簡単だが、確実に露見する。




 王が入り浸ってる様子からも重要な部屋である事は間違いない。ここの調査は最後に回すのが無難だろう。



 総評だが、潰すのは容易。上層部がきな臭い、他の城の人間はまともで好意的。



 だがそれが気持ち悪いだ。何故か? 上層部が数人おかしいなら分かる、まともな人間に大多数が主権を握り正しく導けばありえなくも無い。しかしだ、姫を除く上が怪しすぎる。



 姫は多分蝶よ花よと育てられたお花畑だ。話した印象からそうだった。こいつならパンが無いならお菓子を食べれば良いとか本気で言いそうなくらい、創作やでっち上げでは無くだ。



 さて、当然だが外へは簡単出れない。そう思ってたんだが、護衛を付ける条件で簡単に受理された。



 俺は「この世界を少しでいいから知りたい」



 こう王へ言った。その返事は意外な物だった。



「わかった、そちの鍛錬や見識の為にもなろう。馬車で一月程度の旅になるが、復興地等を通りこの国の状況を見てきて欲しい」




 これがあの魔族の王や巨壁の王や俺の事を妙な呼び方する王であればある程度信じて総合利益を取れる行動をしただろう。だが、この王から感じる雰囲気は確実に信用できるソレではない。




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