第339話砂漠の森

 この王。本当に行動が早い。あの後すぐに金や他の宝石や鉄などの物を山ほど準備していた。中でも驚いた物はブラックオパールやレッドサファイヤ、アレキサンドライト。この世界での希少度は知らないが元の世界であれば魔術師は触媒として、一般人ならダイヤを遥かに超える希少宝石として欲しがるだろう。



 これらの希少な物が大量に取れるこの島は異常としか言い様がない。不自然すぎる、それらを俺が持つ限りの食料分貰い、使い道の無い土地を貰い受けた。価値はほぼ捨て値の土地だそうだ。



 その後その部下に案内されて向かった先は砂漠だ。まだ小規模なのが救いだがこれはあまり良い傾向とは言えない。



 部下の騎士は去り、一人取り残される形になった。周囲に監視の目は無いようだ。捨て値の土地だからなにかあった所で痛くないってことか。



 まずは置換魔術と転移符との複合術式で人の島の森とこの砂漠を入れ替える。術式その物は上手く行ったが、ここからだ。




 それから擬似的な雨を降らせて森周辺の土を少しづつ入れ替えた。その後また人の島へ向かいあまり手の付いてない森や川辺の土を広範囲にならないように交換して行った。




 無論一気に全て変えれば楽だが人の島にこれと言って怨みはない。だから元の土地の力で回復可能な範囲内での交換だ。最初の森だけはそうは行かないだろうが。




 それから大体半年を楽園とここを行き来しつつ整えた。序盤は枯れる箇所もあったが今では問題ない。気候が近い事が救いだったのだと思う。森を中心として自身の土地の全ての土壌改善も終わった。




 農作物を森から一番離れた場所に植えてみたが見事に育っている。これなら少しは食糧問題も改善できるだろう。







ーーー






 ダイスに土地を委譲して3ヶ月が経過した頃。





「報告を聞こうか」



 私は騎士へ問う。



 だが騎士は戸惑うような素振りを見せオドオドしている。普段の彼ならありえない事だ。




「なにか問題でもあったのかな?」




「いいえ、問題等は無いのです。ある意味あるとも言えますが。この眼で見て、未だに信じる事が出来ないでいる物でして」




「君は優秀な騎士だ、だからこそ君はここにいる。どのような報告しても罪には問わない、きっと商人殿は私達の想像の先を行ったのであろう?」




 騎士はそれを聞くといつもの彼の空気を取り戻した。さて、どうなるか?




「商人殿の土地、あの砂漠ですが、今現在、森になっています。調査した所動物も生息していて、果実などもありました。正直自分自身の目を疑う程の事態ですが、私が見て調べて得た情報は以上です」




 なにをどうすればその様な結果が起こると言うのだ?私はどうやら豊穣の神を味方につけたらしい。いや、豊穣の神は女神か。どちらにしろ想像の遥か上を行く結果だ。




「今現在の雑務を急いで終わらせる。今回ばかりは自身で確認せざるを得無い」


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