第338話黄金の国

「逆に配給と言ったがそれは途方も無い量の食料ではないのか? 決して安くは売っているつもりも無い。それこそ莫大な額になる」



「構わないさ、民こそが国の宝、全てはそれを守る道具に過ぎない」



 凄いなこいつ本気で言ってる、俺にとってのあそこと目の前の優男のこの島は同じ様な物か。少しくらい手を貸しても良いかな。



「ではそちらの出せる物を聞こう。物資でも鉱物でも何でも良い、価値がある物であれば受け取ろう」



「実はもう出せる分はある程度準備してるんだ。この羊皮紙に書いてあるだけが限界だ」



 受け取って見て見ると驚愕した。もしこの内容が本物であればあの法外の値段でも食料を買う者が多いはずだ。



 何故なら金の量が異常だからだ。地球にある金の量はおおよそ25メートルプール4杯分程度だそうだが、この目録を見て見ると3杯分くらいはありそうだ。そりゃこの島が狙われるのも頷ける。しかもまだ金を含めた鉱物が枯れて無いとか。黄金郷とはまさにここの事だろうよ。




「驚いてくれたみたいですね。無論これだけの金の分の食料を準備しろとは言いません。商人殿が通る場所は救われている事は知っています。進行方向を予測して待っていたくらいですから」



「アンタはこの国の王か?」



「流石にこれだけの額を払うと言えばそう思われるでしょうね。一の島王エルド、これが今の肩書きさ」



「食料だけが目的じゃない。井戸か?だがアレは永続して続く物ではない。今までの者達にもそう言った筈だ」



「無論井戸もお願いしたい、それよりも商人殿に期待しているのは知識と力だ。無論戦争に参加しろなんて事は言わない。今回の戦争で気付いたんだ。いくら金があろうともいずれは尽きる。商売をしようにもこの3島外へ出る技術もない。出れても輸送中に食料がダメになってしまうだろう」



「俺は例外だろうな」



「商人殿だって何時までもここに付き合うとは限らない、いても人の寿命は短い。だから、貴方にこの国の食糧自給率をあげる手伝いをして欲しい。成果に対して、費用に対して、商人殿が使う時間に対して確実に対価を支払うと約束しよう。どうか力を貸してはくれないか?」



 巨壁の再来かこっちの方がハードだが。



「まずは土地を貰おうか? 当然これは費用としてだ。土地は良い場所でなくても結構、土壌改善の実験に使う、成功した場合は元の土地代を差し引いた額でそちらに売っても良い」



 あてが無い訳ではない。が、難しいのも事実。



 エルドは俺の両手を取り、感謝を述べる。だが、如何せん顔が近い。そっちの趣味は無いので止めて欲しい。



「ありがとう、本当にありがとう」



 巨壁の王も同じだが本当にギリギリまで追い詰められてたんだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る