第337話金眼の優男

 今現在魔族の島に来ている。当然人の島での術式は起動した後でだ。今頃阿鼻叫喚だろうが。



 ここでの商売は単調だ。感謝と金と資材を得て、食料を渡す。そして鉱脈に術式を仕掛ける。それを繰り返しながらただただ進む。別に金が欲しい訳ではない、魔族を救う為でも無い。ついでにならやる偽善程度でやってもいいが。




ーーー




 そうして進む事3日で大きめな都市と言える場所に着いた。それと同時に俺をまるで待っていたかの様に門番が頭を垂れ、俺を通す。



 中に入ると如何にも騎士といった風貌の男達が俺の所に来て。




「主がお待ちです。申し訳ありませんがご同行お願いします」と随分と丁寧な扱いで馬車に乗せられた。逃げる事は簡単だが、相手の意図を知りたい。




 昔の俺であればすぐ逃げたであろう、少しばかり力を得て余裕があるからこその行動だ、どちらにせよあまり良い傾向では無いのかもしれない。




 連れて来られた場所は大きな建物、城や屋敷と言うよりは役所のイメージが強い。中も色々な機関を回すための物のように見える。




 真っ直ぐ奥へ奥へ案内されそのまま進む、少しずつ警備が厳重に成るのがわかる。壁が、人がそして設備が守る事を前提とした物だ。



 着いた先には若い優男。水色の髪と前の世界なら正気を疑う色ではあるが、この世界では珍しいで済む部類だ。瞳の色が少しばかり特徴的で金眼ではあるのだが透明度が凄く高い、吸い込まれるようなってのはこう言うのを言うんだろうな。




「これは商人殿、いきなり呼び出してすまない。無論商売の話だからそう構えないで欲しい」



 いや、無理だろ。変な動きをしたら切ると言わんばかりの護衛達だぞ。しかも全員強者である事は疑うまでもない。どこまで要人なんだよこの優男。




「そうしたいのも山々なんだがね、周囲の怖い騎士様が怖くてね。どうしても構えてしまうさ」




 精一杯の軽口だ。



「それはすまない。君たちももう少し力を抜いてくれないか、御客人が困ってしまうだろう?」




「それで?本題に入ろうか? 大方食料の買い付けかと思うが、そちらの欲しい物と値段を聞こうか?用途なんかを聞けば更にお勧めを提示できるかもしれん」





「ああ、成るほど彼が気に入るのも分かる。お察しの通り食料の買い付けさ。用途は国内の飢饉の緩和が目的さ。今現在戦時中でどうしても防衛ラインに食料を回す必要があり、召し上げなければならない事態だ。召し上げを止めて、逆に配給をできるようにしたい」




 分かってはいたが偉い奴か。それなら人の国で仕掛けた行き掛けの駄賃も役に立ちそうだ。ただ問題があるなら巨壁は呪いの類の術式が原因で食料が貧しかったが、ここは元から豊かな土地ではない。




 難しいな。


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