第340話神結び

 王が来た。来るのは分かりきった事だ。自分の国でよそ者が何かしてるのだから、邪魔はしなくとも、監視、もしくは経過確認くらいはするだろう。



 その割にはすこしばかり来るのが遅い気がするが、この御時勢なら仕方ない。



「久しいな、エルド王。こちらはやれる限りを尽くして最高の商品に仕上げたつもりだが、どうだろうか?」




「これ以上の仕上がり等、他にあるものか。商人殿、貴方は豊穣の女神に祝福されてるようだ」



 豊穣の女神・・・なるほどうまく行き過ぎる訳だ。狙いはなんだ?



 そう思った瞬間、周囲の時間が止まった。どうやら当たりらしい。



(どういうつもりだ?豊穣の、お前は俺と接触するべきでは無いと思うが?)



(9割は貴方の手柄よ?私は残りの部分を調整しただけ、人間にここまでやられると沽券に関わるのよね。邪魔するつもりは無いわ。取引をしましょう)



(まともな取引なら応じよう)



(簡単な取引よ。貴方はこの王に対価を貰い、私を紹介する。私はここに私の権能を与える。それだけよ)



(自分の勢力圏を欲したか。手間が省けるのは事実、俺の行動に邪魔をしないと神としての契約を結ぶのであれば受けよう)



(何故貴方は偉そうなのかしら?)



(どうしてだろうな? で? どうする?)



(いいでしょう。他の神々に、そして私自身に誓って邪魔はしません)



(商談成立だな。所でだが、最近この空間でも動けるんだが何故だ?)



(人間辞めかけてるんじゃないの貴方)



 声色から引いているのが分かる。まぁ良い事なのでそれはそれで良しとしよう。




(それじゃ任せたわよ)



 そして時は動き出す。



「所でエルド王よ、もしも豊穣の女神と会い、協力を取り付ける事が出来るとすればどれほどの財貨を差し出す?」



「そうですね、ここの分を合わせて、この前の目録を全て出しても良いですよ。戦時中なので武具の材料は無理ですが」



「その言葉に嘘偽りは無いな」



「神に誓って」




(だそうだ、俺との接触も俺自身が許可すれば問題なかろう?)



「じゃあ呼ぶとしようか」




 タイミングを見計らっていたように出てくる女神、同時に平伏す俺以外。やっぱり神なんだなこんなんでも。



(今のは聞き捨てならないわよ)



(自業自得だ。後はお前等でやれるだろう? 必要ならば呼べ、俺は休む)



「エルド王、後はどう付き合っていくか話し合えば良い。食料問題は解決したに等しいんじゃないか?報酬は後ほど取りに来る」



「貴方は本当に聖人だったのですね」



「そういうのはアンタみたいな奴にこそ相応しい。俺は悪党の方が近いさ」



 事実この島からの鉱物は根こそぎ奪うのだ、それを知る事はないだろうがな。

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